“21世紀世界制覇” 目指す「シン・共産主義革命工作」
―中国の「サイレント・インベージョン」とマルクス主義変異株の運動―

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元国会議員秘書 篠原常一郎

人権問題非難決議で“犯人”(=中国)を名指しできない日本の国会
 昨年から今年にかけて、国会では中国における人権状況を懸念する良心的な人々をやきもきさせる事態が続いた。「ウイグル、チベット、南モンゴルなどの少数民族への民族弾圧」を非難する決議が、超党派で2021年3月から準備されたのに、当時の“自民党重鎮”らの芝居がかった詐欺的行為で通常国会での採択が妨げられたのだ。結局、昨年10月末の総選挙後も見送りにされ、漸く今年になってから採択されたが、肝心の“犯人”の国名=中国を名指しに出来ず、内容も本来別に決議されてしかるべきミャンマー軍政の人権抑圧も盛り込まれるなどして、中国だけの“民族浄化”政策を取り上げたものとならぬようボヤかされるという始末だった。
 幸い、3月1日に国会で採択された「ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を非難する決議」は、迅速かつ非難先をボヤかすことなく「ロシア軍による侵略を最も強い言葉で非難する」「即時の攻撃停止とロシア国内への撤収を強く求める」と明記された。この違いが出たのは、日本の政財界に深く広く浸透した中国の影響力故と言える。
 筆者はウイグル人弾圧問題について、10年以上前から関心を持ち、亡命者や日本在住者とも交流を続けてきたので、知人の国会議員から情報を得ながら「非難決議」の案文調整、更に各党の党内手続き状況もつぶさに観察し、主に自分のYouTube/SNS発信を通じて提言や批判もしてきた。その過程を振り返って思うのは、かねてから「親中・媚中」との批判を集めるのは公明党であるが、多数議席を持つ政権党として君臨する自民党の中があまりに親中・媚中体質になっていることへの驚きだ。
 自民党でも保守色がとりわけ強い人は、歯に衣着せずに中国批判を公言するが、大臣クラスや各派閥のリーダーになった殆どの人が、国際的な人権問題、民主主義の根幹に関わる内容に関する事でも直ちに態度を明言させることなく、どこかの顔色を窺うような態度をとる。昨年9月、さらに驚いたのは自民党の総裁選を戦った4人の候補者—岸田文雄、河野太郎、野田聖子、高市早苗の各氏―のうち、親中派が3人を占めたことだ。
 自民党の総裁選とは、よくも悪くも党内勢力・派閥のせめぎ合いとその合従を含めた力関係を反映するものだが、保守派で対中姿勢の厳しい高市氏を除いた4分の3が親中派。おまけに最終決戦投票が親中傾向の強い宏池会首領の岸田氏と親子代々の親中派(ファミリー企業の日本端子が中国共産党系企業との合弁でソーラーパネル事業も手掛けている)の河野氏との間で行われるという、「対中姿勢ではどっこい」としか言いようのない選択の場となってしまった。