2022年5月11日、経済安全保障推進法が成立した。この法律は4つの柱から構成されるが、2本目の柱は、基幹インフラの安全性確保だ。ところが、この方針と逆行する事態が進行中である。外資系企業の日本子会社が、基幹インフラ事業のひとつ、電力事業へ合同会社の転売を通じてステルス参入を行っている。この問題は、橋下徹元大阪市長を巡り、ジャーナリストが追及をしているので、ご存じの方も多いと思う。
本稿では、経済安全保障の観点と外為法の観点から、上海電力日本株式会社を例に挙げ、同社子会社が岩国市にあるメガソーラーを取得した事例を中心に解説を行う。
上海電力と中国政府の深い関係
中国の国有発電大手に国家電力投資集団という中央企業がある。中央企業は、国務院国有資産委員会が監督管理する企業だ。国家電力投資集団は、中国の5つの主要な発電グループの1つであり、世界最大の太陽光発電企業とされる。国家電力投資集団には、13万人の従業員と62の子会社があり、中国のエネルギー安全保障を確保するという使命が課されている。この国家電力投資集団の傘下にある企業の1つが、上海電力股份有限公司(上海電力)だ。
上海電力は、上海市や江蘇省、安徽省を中心に発電事業を展開し、石炭火力発電、ガス発電、風力発電、太陽光発電などを手掛ける。上海電力は、上海証券取引所に上場しているが、その主要株主と株主比率は、第1位、国家電力投資集団有限公司(46.3%)、第2位、中国電力国際発展有限公司(13.9%)であり、中国政府関連株主2社が上海電力の経営権を有する。董事長、黨委書記は胡建東氏だ。この上海電力の日本法人が、上海電力日本株式会社(上海電力日本)である。このように、中国政府が実質所有する上海電力日本は、経団連に加盟している。
岩国基地は、日本の防衛の要
中国から我が国を防衛するための重要拠点が岩国基地だ。2010年、岩国基地の滑走路が沖合に移設された。2019年には、神奈川県の厚木基地から空母艦載機約60機が移転し、岩国基地の所属機は約120機となり、極東最大級の航空基地となった。艦載機部隊が所属する第5空母航空団の司令部機能も厚木から岩国へ移転。この岩国基地に近い場所に、上海電力日本の傘下にある合同会社東日本ソーラー13(東日本ソーラー)が運営するメガソーラー(岩国メガソーラー)がある。出力は、75,000キロワットを計画。発電した電気は、全て中国電力(広島市)へ売電される。