これからの日本
―何を為すべきか―

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産経新聞客員論説委員 千野境子

 只今ご紹介にあずかりました千野境子でございます。
 この講演のお話をいただいた時、シンポジウムのテーマが「分水嶺に立つ日本」と伺い、私自身は「世界は今、分水嶺に立っている」と考えていたこともあり、タイムリーに感じました。そこで世界が歴史の分水嶺に立つ中で大変難しいことではありますが、「日本はどうあるべきか」「日本はこれから何を為すべきなのか」を考えていく、そのために何かヒントになる話ができればと思ったような次第です。
 
ウクライナ戦争は第三次世界大戦か
 「歴史の分水嶺に立つ」というのは今次国連総会のテーマでもありました。間もなくウクライナ戦争が始まってから8ヵ月になりますが、最近思うのは、これは事実上の第三次世界大戦ではないかということです。もう始まっているのかも知れないと。
 第一次、第二次の両大戦は、総力戦という形でヨーロッパ、そして世界を巻き込みました。戦場でない地域でも、例えば中南米諸国は第二次大戦の終盤には次々と参戦しています。第三次世界大戦といっても、実際にミサイルが撃ち込まれているのはウクライナだけです。しかし、欧州連合、米国、そしてイランや中東、アフリカ諸国も食糧危機やエネルギー危機といった形で戦争に巻き込まれている。
 やはり戦争というのは、常に新しい顔でやってくるのではないかと思います。多少とも取材経験のある湾岸戦争やイラク戦争、ボスニア紛争などから思うことは、同じ戦争は決してないということです。であるならば、今のウクライナ戦争も、核の使用云々も含めて第三次世界大戦であるかも知れないという覚悟と準備が、我々の側にも要るのではないか。そういう意味で「歴史の分水嶺」に我々も立っているのではないでしょうか。
 ウクライナ戦争の終わりがなかなか見えず、泥沼化するとか長期化すると言われています。また両大戦のような終わり方はしないであろうということも既に言われています。では朝鮮戦争のような休戦協定が結ばれるのかというと、それも考え難い。一体どのような出口戦略が描けるのか。これはもう私の手に余るような話で、是非とも専門家やここにいらっしゃる皆様に考えていただきたいというのが私からの問いかけでございます。
 
日印関係の重要性
レジュメの中に、追悼として安倍晋三元総理、ゴルバチョフ元ソ連大統領、エリザベス女王の3人のお名前を書きました。