世界の激変と日本の国難

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顧問・麗澤大学特別教授 古森義久

日本の根幹が突き動かされる
 2023年、令和5年という新たな年を迎えて国際情勢と日本の立場を改めて考察すると、強い不安感に襲われる。世界の新たな激動に対して我が日本は果たして円滑に対処できるのか、という懸念を深く感じてしまう。今や戦後78年もの日本の年来の国のあり方が根幹から突き動かされ、危機に瀕していると感じるからである。
 私はこの1年、また例年の如くアメリカの首都ワシントンを報道や研究の第一拠点として国際情勢を追ってきた。東京での観察もそれに加えてきた。アメリカでは超大国の内政、外交を至近距離で考察した。アメリカから見る今の世界の変動も切迫した感覚で追跡に努めた。
 その結果の観察の全てが日本という国家への根本からのチャレンジとして迫ってくるという実感なのである。そして日本がその挑戦に耐えることができるのか、という心配に襲われるのだ。
 
国際変動の挑戦
 国際的な変動が旧年、新年という暦の上の区切りには従わないことは自明である。だがその変動を感知する側が新しい年という人間の営みの上での区分を機に、来し方行く末を想うことは不自然ではないだろう。だから新年の始めというこの時点で敢えて日本にとっての国難とも評したくなるそれら激変について論じたい。
 今の世界で何が激しく変わりつつあるのか。その変動を便宜上、7つの要素に分けて報告しよう。
 
7つの激変とは
 当然ながらそれら変動の諸要因は相互に関連し、絡み合っている。だがそれぞれの要因の特徴を分かりやすく認識するためにはある種の分類は有益だと思う。
 まず第1の国際情勢の変動はアメリカ主導の国際秩序への挑戦である。
 第二次大戦後の世界ではアメリカが主体となって築いた国際秩序が基盤となってきた。国際連合、北大西洋条約機構(NATO)、日米同盟、さらには世界銀行や世界貿易機関へと発展する自由貿易システムなどがその骨組みである。
 当初はソ連共産党政権という最大の敵対勢力が存在したが、所謂、自由民主主義陣営はこの国際秩序を堅持した。民主主義、人権、法の支配などを根幹とし、1991年にソ連共産主義政権が崩壊してからは、この国際秩序はグローバルな普遍性をますます強めた。日本も勿論この秩序の有力な一員であり、主要な受益者だった。
既成の国際秩序が崩れるのか ところがこの国際秩序に近年、正面からの挑戦者が登場してきたのだ。具体的には2013年頃からの中国による南シナ海での軍事膨張、2014年のロシアによるウクライナ領クリミアの軍事併合が顕著な前兆だった。