中国の監視カメラで監視される日本

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政策提言委員・経済安全保障アナリスト 平井宏治

 2022年10月25日、テレビ朝日は「世界シェア2位の中国のセキュリティ会社が日本に初上陸し、監視カメラの技術や製品を報道陣に公開」と中国・浙江省に本社があるダーファ・テクノロジーを紹介。同社は監視カメラに独自の人工知能(AI)機能を取り入れ、顔や指紋などの生体認証とデータの収集で高い技術力があると報道し、「今後は小売店やビル、駐車場など幅広い業種に事業を展開したい」と李斌ダーファ・テクノロジー日本支社長のコメントを全国に放送した。
 しかし、英米では、国家安全保障の脅威となる通信機器や監視カメラ、無線などを法律により使用を禁止する動きが顕著になっている。日本では、これら国家安全保障の脅威となりかねない機器の販売が野放しのままだ。政府は早急な対応を行う必要がある。
 
米国の動き
 2018年8月、米国で2019年度国防権限法が成立し、表1記載の5社(規制5社)が米国の政府調達から閉め出された。米国の政府調達に関連する日本企業を含む外国企業は、三次サプライヤーまで、これら5社の機器や部品を使用していないことを確認するように同法で定められた。19年10月、米商務省は、これら5社を他の26の中国政府及び組織とともに「エンティティ・リスト(ブラックリスト)」に掲載し、輸出管理の対象とした。19年11月、トランプ米大統領(当時)は「共産中国の軍事企業リスト」を発表。ハイクビジョンを始めとする同リストに掲載された企業に対し、全ての米国法人や個人が投資することを禁止する大統領令に署名した。民主党への政権交代後もこの方針は維持され、21年6月、バイデン米大統領は「中国軍産複合体企業リスト」を発表し、全ての米国法人や個人が投資することを禁止する大統領令に署名した。
 米国政府の動きに応じ、米連邦通信委員会(FCC)は21年3月、国家安全保障に対する脅威と見做す企業リストに規制5社を掲載した。
 米国政府だけでなく、民間のセキュリティ・ソリューション・プロバイダーの主要業界団体であるSecurity Industry Associationは、21年6月、ダーファ・テクノロジーの会員資格を終了させた。翌7月には、ハイクビジョンが同団体の会員から脱退すると報道された。
 21年10月、米上下両院は、Secure Equipment Act of 2021(2021年機器安全法)を可決し、11月、バイデン大統領が署名し同法は成立した。同法は、国家安全保障に脅威を与えると見做される組織を対象リストに掲載し、これらの企業の機器やサービスに対し、FCCが新しい機器認可を検討または発行することを禁止するもので、米国市場からの追放を意味する。