戦後初めて安全保障の危機認識で国民が政治の先を行く

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政策提言委員・衆議院議員 細野豪志

はじめに
 2月26日、自民党に入って2回目の党大会が終わった。昨年の党大会は「借りてきた猫」のような状況だったが、今年は若干の余裕をもって党大会に臨むことができた。党幹部から発せられる「自民党しかない」というフレーズを耳にすると、時に過去の自分を振り返り胸に痛みを覚えつつ、民主党など野党に長く身を置いてきただけに腹に落ちるものがあった。
 今年の予算委員会は、閣僚の不祥事で荒れた臨時国会と打って変わって安全保障、エネルギー、物価高、子育てなどが議論された。政策中心の議論となったことを率直に評価したいと思うが、安全保障に関しては「国民をどう守るか」より「反撃力が先制攻撃になるかどうか」の方が議論の中心になったことに違和感を覚えた。
 防衛費の増額や反撃力の是非などの「そもそも論」から出発する与野党の議論と、現役・OB自衛官や専門家によってもたらされる圧倒的な情報量をベースに防衛大臣経験者を中心に議員間で行われる自民党内の安全保障議論は質的に大きく異なる。国の根幹に関わる安全保障の議論に加わっている時ほど、自らの選択は間違いなかったと感じることはない。
 昨年の歴史的転換点となる防衛3文書改定の議論に加わることができたのは幸運だった。中国を「これまでにない最大の戦略的な挑戦」と位置付けるなど脅威の存在を正面から明記し、反撃力の保有やサイバーディフェンスなどを示した3文書は画期的なものだ。しかし、現段階では依然として絵に描いた餅であり中身を形作っていくのはこれからだ。我々、政治家が本当に責任を果たすべきはこれからだ。
 
台湾海峡有事政策シミュレーションで得られたこと
 自民党に入ったことで得られた経験の中で最も得難かったのは、一昨年、昨年と「日本戦略研究フォーラム(JFSS)」主催による台湾海峡有事の政策シミュレーションに参加できたことだった。思い起こせば一昨年のシミュレーションの際は自民党入党前だった。あのシミュレーションを経験したことによって、直後の総選挙をどうしても乗り越え、もう一仕事しなければならないと決意を新たにすることができた。
 得難い機会を提供して下さった岩田清文元陸幕長、武居智久元海幕長、尾上定正元航空自衛隊補給本部長、兼原信克元内閣官房副長官補、そしてJFSSの長野禮子事務局長を始めとした全ての関係者にこの場を借りて深く感謝の意を表したい。