党内外から委員長公選の要求
―日本共産党の危機的状況が生み出したもの―

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政策提言委員・元参議院議員 筆坂秀世

 今年1月、日本共産党に関する本が立て続けに3冊も出版された。19日付であけび書房から10人の識者による『希望の共産党 期待をこめた提案』、20日付では、かもがわ出版から元共産党京都府委員会常任委員などを歴任し、現在は京都府内で最大規模の共産党後援会会長を務める鈴木元氏の『志位和夫委員長への手紙 日本共産党の新生を願って』、同じく20日付で元共産党中央委員会の政策委員会で安保外交部長を務めた松竹伸幸氏の『シン・日本共産党宣言 ヒラ党員が党首公選を求め立候補する理由』が文春新書として出版された。
 全く異例なことである。『志位和夫委員長への手紙』『シン・日本共産党宣言』は現役の共産党員によるものである。松竹氏は速攻で除名されてしまったが。こんなことは共産党の歴史でも例がない。ここには日本共産党が組織面でも、政策面、革命の展望でも深刻な危機と行き詰まりに直面していることが如実に示されている。
 
共産党本の出版が相次ぐ背景―国政選挙での相次ぐ敗北
 鈴木氏の『志位和夫委員長への手紙』でも詳細に語られているが、一昨年の総選挙、昨年の参院選での共産党の無残な敗北は、相当深刻なものだった。鈴木氏は、「はじめに」で、「正直言って私は2021年の衆議院選挙結果、続く2023年参議院選挙の結果を見て、『共産党は国政レベルでは存亡の危機にある』と感じています」と述べている。まともな感覚である。
 2021年10月31日投票の衆院選では、共産党は「政権交代」論を大きく打ち出した。志位氏は、新宿での第一声で「今こそ、みんなで力を合わせて、政権交代を実現し、国民の声が生きる新しい政権、作ろうではないか」「政権交代のためには本気の野党共闘が必要だ。私たち共産党はそのためには3つ必要だと言ってきた。共通政策、政権協力、そして選挙協力だ。公示日までにこの3点セットがしっかりそろって、本気の共闘の態勢が作られたということをみなさんにご報告したいと思う」と意気揚々と語ったものである。
 立憲民主党を中心とした野党が政権を獲れば、共産党は「閣外協力」をするという約束まで両党間で交わした。
 後で聞くとみんなこんな調子の演説をしていたようだ。田村智子政策委員長などは、衆院選に勝って政権入りすると思っていたというのだから、共産党指導部のお気楽ぶりには呆れるほかない。
 獲得目標も比例で850万票と打ち上げた。だが実際に獲得したのは、比例で約416万票であった。