「防衛3文書」に基づく施設整備に関する提言

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常務理事 長野俊郎

はじめに
 「自民党には恩もあるが恨みもある」と言ったまま鬼籍に入った多くの諸先輩は「防衛3文書」を知って、「先ずは良しとするか」としたのではないか。
 この文書に基づく自衛隊施設整備は、現在(2023年5月末日)、最適化・強靭化を目指し基本方針策定及びマスタープラン作成段階にある。この作業は自衛隊を強くするためには見逃せない好機であり、正に百年に一度のチャンスと言える。既に議論は進行中であるとは思うが、またとないこの機会に遺漏なきよう以下を提案したい。
 
1 直接関係するもの
(1)戦力確保のためのヒトとモノの避難施設の設置
 ・掩体壕、避難壕(シェルター)の設置
 ・避難のための会議室、集会場、道場、娯楽室等の多目的室の設置
 ・HEMP対策及び放射線遮蔽板、シールドルームの設置
 ・被弾時の裏面剥離対策
 ・外壁断熱材による省エネ化
 ・津波対策
 ・塩害対策
 
 政府はこれまで自衛隊に不要な我慢を強要し続けた。その結果自衛隊は「耐え忍ぶことも国防に必要な姿勢である」と弱気になってしまっている。
 例えば、「たまたまこの土地に駐屯しているだけですから地下の構造物は不要です」というようなやせ我慢も聞こえるし、「予算が本当に付き、継続するのを確認してからでも遅くない」という政治不信の声もある。
 すべて長年の政治の不手際に依るものではあるが、これでは有事の対応に支障をきたしかねず、本末転倒であると言われても致し方あるまい。
 今こそ堂々と「〇〇がないと守れません、戦えません。こうしてくれ」と政治に正直に物申すことであり、それが防衛に携わる者の大事な仕事でもある。
 
(2)ライフラインの抗堪化及び多重化
 ・施設のDX化、データ化
 ・共同溝の普及
 ・上水の確保(平時は自治体に依存/井戸水利用)
 ・下水扱い(マンホールトイレの備蓄、浄化槽確保、汚物固形化)
 ・電力の確保(非常用発電機)
 ・通信の維持
 ・多重化を睨みつつオール電化への転換
 ・蒸気ボイラー(食堂厨房、浴場など)のあり方検討
 ・焼却炉(平時は自治体に依存)
 
 ライフラインの多重化及び抗堪化は、大いに進めるべきである。