《オープンディスカッション》

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第47回 定例シンポジウム 「台湾海峡危機 ―日本の備えと役割― 」

丹羽:これよりオープンディスカッションに移ります。第3 回「台湾海峡危機政策シミュレーション」におきまして、内閣官房長官役をお務めいただきました衆議院議員の長島昭久様。国土交通大臣役をお務めいただきました参議院議員の有村治子様。国家安全保障局長役をお務めいただきました島田和久副会長。統裁部長をお務めいただきました元陸幕長の岩田清文様。そしてシナリオ統制長・副部長をお務めいただきました元海上幕僚長の武居智久様、ご登壇下さい。
 尚、ここからは産経新聞月刊『正論』発行人の有元隆志様に進行役をお務めいただきます。
 
 
有元:月刊『正論』の有元です。まず初めに、第1 回目からご参加の長島さんに今回のシミュレーションのご感想、ご所見をお願い致します。
 
長島:衆議院議員の長島昭久です。今回が私にとりましては3 回目の参加となりました。1 回ずつ、様々な気付きや反省点がありますが、まずは現職の国会議員として日本でシミュレーションに参加する機会がなかった中で、こういう貴重な機会を作っていただいたJFSS の皆様方に改めて感謝申し上げたいと思います。
 実は私たち国会議員は、1 年余をかけて、毎月第3 水曜日の夜に集まって、勉強会を重ねて参りました。第3 水曜日に集まるので「山水会」と呼んでいます。様々な分野でご活躍の専門家による講演をお聞きした後、質疑応答、ディスカッションする訳ですが、毎回、様々な意見や提案等が出て、実に有益な勉強会となっています。何を隠そう、その山水会のアドバイザーが、ここに登壇されている島田さんであり、岩田さんであり、武居さんです。この皆さんのご尽力によって、政策シミュレーションが可能になったということを、この場で披露させていただきたいと存じます。・・・・
 
有村:ご紹介を賜りました参議院比例全国区、【北海道から沖縄まで47 都道府県】を選挙区にしております参議院議員の有村治子です。日本全域を選挙区としているため、日常的に各地を歩き、日本全体にとって意義ある国家国民益を探求していくことが全国区選出の存在意義だと認識し、現在4 期目の議席をお預かりしています。
 まずもって日本戦略研究フォーラムによって、このような緻密なシミュレーションに参加する機会を与えていただきましたことに感謝致します。実際のところ、シミュレーションでは迫りくる厳しい状況の中で、嫌というほど決断を迫られました。・・・・
 
武居:それではまず政策シミュレーションのシナリオと概要の論点について報告致します。先ほど統裁部長から説明がありましたとおり、今回のシミュレーションは戦略3 文書に基づいて、2027 年に概成が見込まれる防衛力を前提としています。能動的サイバー防御、反撃能力など、我が国は十分ではないのですが、一定の能力を保有しており、必要な法制度もできています。従ってシミュレーションは、こうした能力を政治的にどのように運用するかが主な論点となりました。
 背景想定は、習近平国家主席は、国内経済の低迷によって政権基盤が弱体したものの3 期目をスタートした。しかし習主席は10 年間で権力を手にしたが権威はない。今後は国家主席として歴史に名を残すために、4 期目を前にあらゆる手段を用いた台湾併合を目指すとしました。・・・・
 
岩田:今、長島さんが仰ったように、この3 文書に書かれた能動的サイバー防御が導入されれば、今回シミュレーションでも確認できたように、我が国も十分対応できると思います。戦略3 文書には、27 年度までにその体制を取ると書かれています。現状約900 名のサイバー部隊を増強して、27 年度までに自衛隊内に4,000 名のサイバー部隊を作り、またサポート要員も含めてトータル2 万名の体制を作るとあります。
 これらに加えて恐らくは警察も体制を強化するでしょう。こういった国家組織としてのサイバーにおける実働部隊は訓練することが必要です。組織を整え、訓練しないと使い物になりません。スーパーコンピューターや人工知能(AI)をも駆使して暗号を解き、相手のサイバー空間に侵入して特定しなければならない。誰が、どこから、どういう攻撃をしかけているのかということを掴まなければならない。その相手を特定するには、サイバー攻撃を受けている民間事業者との連携も不可欠です。・・・・
 
島田:日本は、今回、防衛力の抜本的強化を行い、その前には平和安全法制の整備を行ないました。このように、これまでは、安全保障に関わる制度の構築を進めてきましたが、これから求められるのは、現実の事態に即して、これまで構築した制度を、実効性を持って動かすことです。そのために必要なのが、意思決定なのだろうと思います。
 ご指摘の認知戦は、認知領域における戦いです。認知領域というのは、言ってみれば人間の頭の中ですが、今や、この領域は陸・海・空といった伝統的な領域、さらには宇宙空間、サイバー空間に続く、第6 の戦場と考えられています。
 自衛隊で考えてみれば分かりますが、自衛隊は総理大臣の命令がなければ一兵たりとも動かすことができません。認知戦によって相手の政治指導者の思考に影響を与えて、意思決定を左右する、意思決定をコントロールすることによって、究極的には戦わずして勝つというのが認知戦の目的だと思います。いくら防衛力を強化しても、政治の判断がなければ自衛隊は全く動くことができず、国民保護ですらできないのです。・・・・