日本の安全保障を全うするために

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政策提言委員・元陸自化学学校長 鬼塚隆志

 日本の安全保障を全うするには、特に現在日本に対して最大の危機を引き起こしている中国(中華人民共和国)に対抗するためには、端的に記述すると、国を守りぬくという国民の気概はもとより、次の3 点が必要である。
1. 中国の例えば日本の尖閣諸島領有化を目指す軍事侵略に対して、実際に戦える防衛力を整備すること
2. 日本を弱体化しようとする、特に日本を自由主義・民主主義国から引き離し、中国の支配下(圏)に置こうとする、日本国・日本人に対する中国の悪意ある働きかけ(工作)に対処すること
3. 実際の爆撃、弾道ミサイルなどによる核攻撃等に対して国民を防護できるシェルター(避難所)を整備すること
――である。
 
 1 については、日本も漸く2022 年12月に新たな「安保3 文書」が閣議決定され、真に防衛体制・態勢、特に防衛力を強化することになったが、2、3 については速やかに着手すべきである。
 本稿では3 の後に1、2 について若干拙論を述べる。
 3 については、筆者が整備する上で参考になると考えるフィンランド、特に首都ヘルシンキの実情を、「ヘルシンキの住民防護」と題する文献を参考にして紹介する。フィンランドは爆撃、特にNBC(核及び生物化学)兵器の攻撃から、実際に国民、特に都市部の住民を防護するために民間防衛(civil defense)組織を、堅牢な岩盤を利用したシェルターを整備し、日頃から運用している。
 ヘルシンキの民間防衛組織は第一次世界大戦においてイープルで毒ガスが使用されたことに対して、その毒ガス攻撃から住民を防護する必要があるとして誕生したが、第二次世界大戦後は、核兵器の攻撃からも住民を防護する必要があるとして堅牢な岩盤を利用したシェルター(rock shelter)を整備、運用している。
 戦後のフィンランド民間防衛の新しい時代は次の通りである。