はじめに
朝鮮半島情勢が尋常ではない。韓国では左派連合が選挙で大勝し、その勢いに乗じて尹錫悦政権を弾劾に持ち込む構えだ。左派の狙い通り、尹政権が崩壊すれば日韓関係は最悪と言われた文在寅政権時代に逆戻りする。そうなれば、解決に目途を付けた旧朝鮮半島出身労働者(韓国では「強制徴用工」という)問題、慰安婦問題、レーダー照射問題などこれまで日韓の間に横たわっていた問題が再燃し、日韓関係はもとより日米韓協力体制は見直しを余儀なくされるだろう。
一方の北朝鮮は崩壊への道を辿っている。金日成、金正日の陰を脱し、独り立ちを目指す金正恩総書記は、金日成時代より追及してきた国家目標の「南北平和統一」を放棄し、武力で韓国を平定すると豪語、核保有国地位獲得に拍車をかけている。いまや国際社会は北朝鮮の非核化を諦め、「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化」(CVID)という言葉すら聞かなくなった。つまり、朝鮮半島は南北ともに制御不能な状態に陥りつつある。果たして尹錫悦政権はどうなるのか、金正恩政権は盤石なのか、それとも自滅するのか。日本は手をこまねいて事態の推移を見守るだけでよいのか。
左派連合の攻撃に尹氏は耐え得う るか
韓国ギャラップが毎週金曜日に発表する大統領支持率に関する世論調査によれば、尹錫悦氏を支持すると答えた有権者は24%に留まった。尹氏は「世論調査結果を気にしない」(2022 年7 月4 日、記者団の質問に答えて)大統領として知られるが、任期を3 年も残す時点での今回の支持率は、尹氏の政権運営の中間評価の性格が強い。今年4 月10 日の総選挙で左派連合(「共に民主党」や「祖国革新党」をはじめとする野党連合)は、国会300 議席中のほぼ3 分の2 に当たる192 議席を獲得し、この勢いに乗じて一気に尹氏を弾劾し、政権の座から追い出すか、憲法改正という手段をもって、尹錫悦大統領の任期を短縮1 するつもりだ。現有の韓国の憲法では国会議員の3分の2 の賛成が得られれば大統領の弾劾も憲法改正も可能だ。