国家保守主義(NatCon)と反グローバル化の世界的潮流

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顧問・元ベトナム・ベルギー国駐箚特命全権大使 坂場三男

 皆様こんにちは。只今ご紹介をいただきました坂場でございます。日本戦略研究フォーラムには、もうだいぶ長いこと関わりを持たせていただいております。ちょっとした文章をその都度、『季報』に寄稿させて頂いたりもしておりますが、こういうシンポジウムという大きな場でお話をするということは大変光栄なことですし、私に十分果たせる役割かどうか、やや不安もございます。特に、先ほど小野寺先生から大所高所のお話をいただきましたので、それに続いてお話をするのは、大変大きなプレッシャーを感じるわけですが、またちょっと違った視点から、現在の国際情勢について私の思うところをお話ししたいと思います。
統治理念の混迷
  今回のシンポジウムのテーマが、「混迷極まる国際情勢」。まさにその通りですが、何故混迷が極まっているのかというところからこの問題を考えてみたいと思います。混迷が極まっている理由は誰もが想像している通り、中国との関係、北朝鮮との関係、或いは中東情勢、ロシアの問題と色々ありますが、一番大きなところはやっぱりアメリカの政治が非常に不安定な状況にあるということなのではないかと思います。小野寺先生の言葉をお借りしますと、非常に誤ったメッセージが出やすい状況がアメリカ側に生まれてきているのではないかと思います。また、国際情勢を混迷させる問題を別の切り口で見ますと、世界政治、国際社会との関わりのあり方について、別言すれば「統治理念」というか、どういう国際秩序が望ましいのかについて、考え方が国際的に非常にまちまちの状態で、各国がそれぞれの思惑で行動しているという点ではないかと思います。
  国の統治についても、そのあり方について様々な見解や対立があり、国際秩序のあり方についても考えがまちまちです。そういう中で、本来それをリードすべき立場にある米国の国内状況が非常に混沌としているということが、現在の国際情勢全般を混迷極まるものにしている理由なのではないかと感じます。