丹羽:只今より、日本戦略研究フォーラム第48 回定例シンポジウム「混迷極まる国際情勢―日本の矜持を問う―」を始めます。本日、モデレーターを務めます丹羽文生でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
日本は今、大きく揺らいでいる目前の外交・安全保障の問題について、覚悟を持って向き合っていかねばなりません。本日は、この目まぐるしく変化する国際社会の現状分析と併せて、今後の方途を皆様と一緒に考えていきたいと思います。どうぞ最後までお付き合い下さいますようお願い致します。
まず初めに、主催者を代表して、元防衛事務次官で日本戦略研究フォーラム副会長の島田和久より開会のご挨拶を致します。島田副会長、よろしくお願い致します。
島田:ご紹介いただきました島田でございます。本日は日本戦略研究フォーラムの定例シンポジウムにご参加いただきましたこと、主催者を代表して心から御礼申し上げます。
今回は、「混迷極まる国際情勢―日本の矜持を問う―」というテーマで日本戦略研究フォーラムが誇る論客に議論していただきます。このように大変重く、そして大きなテーマでの議論にご参加いただきました皆様に、改めて敬意を表したいと思います。
ご案内の通り、昨日(4 月11 日)、岸田総理とバイデン大統領との首脳会談が行われ、日本時間の今朝、米国議会の上下両院合同会議で岸田総理が演説をされました。日米で出された共同声明を見ますと、「日米同盟は前例のない高みに到達した」と記載されています。また、報道によりますと、バイデン大統領は、「日本以上に重要な同盟国は無い」と述べたと伝えられております。
実際に、防衛・安全保障の分野では、日米間の指揮統制、コマンド・アンド・コントロールの枠組みを向上させるなど、重要な成果がありました。これは殆ど知られていないかも知れませんが、私の理解するところでは、今回の成果の多くは日本側から米国に問題提起をしたものだと思っております。そういう意味では、これまでの米国追従型の同盟関係ではなく、寧ろ、そういう同盟関係は最早過去のものとなったのではないかと思います。そして今回の成果については、突然出てきたわけではなく、ここ10 年余りの日本の多くの取り組み、多くの努力が実を結んだ結果であると思います。これまでの道のりを考えてみますと感慨深いものがあります。
皆様に少し思い起こしていただきたいと思いますが、2012 年12 月に政権交代がありました。その2ヵ月ほど後の2013年2 月に当時の安倍総理がワシントンを訪問して、オバマ大統領と初めての首脳会談を行いました。しかし当時のアメリカの日本を見る目には大変冷たいものがありました。若い方々はこれを知らないのではないかと思います。