第4 回台湾有事シミュレーションは、多くの参加国会議員がリピーターであり、過去の経験を踏まえて、実戦さながらの様相を呈してきた。台湾有事における国家最高レベルの判断は、軍事、外交のみならず、国家機能のすべてを動員した総力戦に対応したものでなくてはならない。治安、防災、経済、エネルギー、金融、為替、交通、公共インフラ、電波、医療などに関わる国家機能のすべてを動員することが必要となる。そして何より、銃後にある国民の戦争指導が最重要課題となる。
国家と国民を直接つなぐ者は、議院内閣制をとる日本憲法下では、国民から選ばれた選良からなる国会によって選出された最高指導者である総理大臣であり、総理大臣を支える閣僚である。
有事に際しては、とにかくまず、勝たねばならない。短期的には軍事的考慮が前面に出る。しかし、軍事的考慮だけに捉われていれば、外交を損ない、戦場で勝って戦争に負けることになりかねない。また、銃後の国民経済、国民生活を常に考えておかなければ、戦争継続能力を破壊され、或いは、国民の政府への支持が瓦解することにもなりかねない。それは大日本帝国の断末魔に際して、まさに日本が経験したことである。
例えば、かつて瀬島龍三氏が、『大東亜戦争の真相』に記したように、1941 年7 月28 日の南部仏印進駐こそが太平洋戦争への回帰不能点であった。しかし、帝国陸海軍にはそのことに気付いた人は皆無であった。1937 年に始まった日中戦争は、ローカルな戦争であり、第二次世界大戦の一部とは考えられていなかった。