危機に臨む「政策シミュレーション」の 意義と必要性

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顧問・前防衛事務次官 島田和久

 「信頼できる」模擬日本政府日本戦略研究フォーラムが主催する「台湾海峡危機政策シミュレーション」は回を重ねること今年で4 回目となった。最初は、ごく少人数の有志による取組みであったが、その成果には大きなものがあった。台湾海峡の危機は我が国の危機であるという現実を白日の下にさらしたのである。
 そして、本フォーラムの最高顧問であった安倍晋三元総理は、「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある」と内外に発信をされた。これにより、この問題は、広く人々の間で共有され、安全保障関係3 文書の策定にも大きな影響を及ぼしたのである。
 今回のシミュレーションでは、いずれ、必ず、日本政府を動かすことになる13名の国会議員がプレイヤーとして参加した。これに加え、国内からは、事務次官や局長、幕僚長などを歴任した行政官や将官のOB、経済界、研究者の有志が、海外からは、米国、台湾の政府高官や将官のOB、研究者有志の参加を得た。さらに特筆すべきことは、国会議員と日本政府OB は、過去1 年間、毎月1 回集まり、シミュレーションに向けて安全保障に関する幅広い勉強と議論を重ねてきたことだ。
 このようなことから、過去に例のない、また内外にも他に例のない、リアリティを持ったシミュレーションになったものと思う。具体的な成果は別稿に譲ることとするが、第1 回のシミュレーションでは、「模擬日本政府」は、「事態認定等において逡巡1」し、危機に際して適時適切な意思決定ができないまま時間切れになる場面があった。しかし今回は、海外の参加者から、「この模擬日本政府は信頼できる」とのコメントをいただくことができた。