第4 回JFSS 政策シミュレーションへの 参加所見について

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政策提言委員・元空自航空教育集団司令官 荒木淳一

はじめに
 台湾海峡危機をメインテーマとするJFSS 主催の政策シミュレーションは今年で4 回目を迎えた。シナリオ、参加者、実施要領等に様々な工夫を凝らすことで年々内容が充実し、多くの政策課題を明らかにすると共に、台湾海峡危機が我が国の安全保障に及ぼす影響を広く国民に伝える貴重な場となっている。
 今回の焦点の1 つは、台湾海峡危機が、日本の経済活動や社会活動に如何なる影響を及ぼすかを明らかにすることであった。次官級の関係省庁会議や国家安全保障会議(NSC)等において、その見積もりや必要とされる経済・財政・金融に関わる政策を議論することにより、その実相を明らかにすることができた。また、エネルギー資源や食料などを海上輸送路に大きく依存する我が国にとって、普段から経済力のレジリエンシーを高めておく重要性やインド洋から我が国に至る海上輸送路防護の重要性が改めて浮き彫りとなった。
 この他にも、認知戦への対応、複合事態への対応、国民保護や在外邦人の輸送などの重要なテーマについても真摯な議論が行われ、多くの示唆を得ることができた。他方で、第1 回のシミュレーションから繰り返し指摘される課題がより一層鮮明となっており、課題解決のための具体的な取り組みがより一層強く求められていることを痛感する。
 本稿では、繰り返し指摘される2 つの課題、即ち、事態認定の課題と日本と台湾との関係に起因する課題等について私見を述べてみたい。