沖縄戦の教訓を“風化” させるな

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政策提言委員・前陸自西部方面総監 本松敬史

1 「沖縄セル」を編成
 去る7 月13 日(土)・14 日(日) に実施された「第4 回台湾海峡危機政策シミュレーション」に演習部・内閣府特命統裁部・沖縄セル長補佐として参加したが、数多くの学びを得ることが出来た。
 今回は、統裁部及び演習部内に「沖縄セル」を編成した。そのメンバーには、小生が自衛隊沖縄地方協力本部長として2 年間(2012~2014)勤務した仲井真県政当時の知事公室長、又吉進氏(外務省参与)、知事公室付研究員の中林啓修氏(日大准教授)、及び沖縄県経済同友会常任幹事の出村郁雄氏(沖縄空港貨物ターミナル㈱社長)を迎え、各々沖縄県庁(県知事:又吉氏)、先島諸島市町村(首長:中林氏)、そして沖縄県経済界(沖縄電力等インフラ事業者:出村氏)の視点から、演習部のプレーヤーの政策判断に資する適宜の状況付与を実施した。
 過去2 回の政策シミュレーションでは、情勢緊迫における国民保護措置着手のトリガーとなる「武力攻撃予測事態」の認定の時期・条件等の在り方がメインであったが、今回のそれは、国民保護法に基づき先島諸島の住民約11 万人の迅速かつ安全な全島避難を可能ならしめる「武力攻撃予測事態」の認定のほか、日本政府の政策判断の正当性(意図=“交戦意思はない”)を国内外に示す、所謂“戦略的コミュニケーション” を含めた中国に対する「認知戦」を如何に適切に実施するかということも大きな判断事項であったと認識する。
 以下、本稿では、今回の政策シミュレーション演習の成果を踏まえ、また昭和19年夏頃から沖縄戦直前の昭和20 年3 月まで実施された「沖縄県集団疎開」の実相に照らした国家としての「国民保護の在り方」について考察したい。