まず、日本戦略研究フォーラムが「第4 回台湾海峡危機政策シミュレーション」(7 月13~14 日)を開催したことに感謝したい。今回のシミュレーションは中国による脅迫と軍事力の行使を組み合わせた台湾掌握の試みなど現実的なシナリオに基づいていた。過去3 回のシミュレーションにおいて、台湾有事に際して要求される日本政府の政治的決断に関する多くの教訓が得られた。その中には中国の侵略に対する日本の作戦準備に関するアメリカの期待を多く含んでおり、危機の発生に備えた日米両政府間の事前調整、作戦計画の立案、作戦準備としての装備・訓練・演習の必要性が重視された。そして、最も重要な教訓は日米間調整もさることながら、日米両政府による台湾政府との事前調整の必要性であった。
「台湾に対する脅迫も侵攻も失敗する」という中国首脳部に対する強いメッセージ
日米による台湾との政府間の防衛計画調整は国際政治の観点から見ると、明らかに繊細な問題である。長期に亘る「1 つの中国」政策にあからさまに挑戦し、中国との紛争を引き起こすことは避けなければならない。しかし、日米は中国政府と中国共産党に対し、中国の侵略を抑止するために台湾の防衛に貢献し、必要とあらば侵略を撃退する準備と意志がある事を明確にしなければならない。台湾を巡る紛争を防止する最大の方法は、もし中国が台湾を攻撃、或いは中国に屈服するように台湾を脅迫した場合、中国の試みは失敗するということを中国首脳部に理解させることである。
台湾海峡危機政策シミュレーションは、事前調整が重要な役割を果たすいくつかの特定の作戦分野に言及していた。要求される政治判断や軍事作戦上の調整やネットワーキングがどのように行われるのかを単純な言葉で説明するために、これら作戦分野のうち、いくつかを取り上げる。