オブザーバーの視点から見た「第4 回台湾海峡危機政策シミュレーション」

.

駐日リトアニア共和国大使館防衛顧問
マルギリス・アブケヴィツィウス

 政策シミュレーションに参加して
 まず、今回のシミュレーションにオブザーバー参加させて頂いたことをJFSSに感謝申し上げたい。私にとって今回は昨年に引き続き2 回目のオブザーバー参加だったが、シナリオが年々深化しているのを感じる。今年のシナリオでは特に中露北を交えた複合事態への対処が謳われ、台湾有事が複合事態の枠内で考えられていた点が注目に値する。現実の国際情勢はまさに複合事態である。中東で起きていることとウクライナで起きていることが連動しているように、それぞれの事象は直接的には繋がっておらず、発生している地点同士の距離が離れているが、協調した際の利益などから物事は相互依存的になりがちであり、これこそが現実のシナリオが複合事態になる理由だ。
 また、たとえオブザーバーとしての参加であっても、議論の一部始終を見聞きすることで、日本の安保環境や安保政策をより深く理解することに繋がった。
 日本とリトアニアの国家防衛に関する認識の類似点
 「抑止力」と「力の行使」の重要性日本とリトアニアの国家防衛に関する認識の「類似点」を取り上げたい。まず、日本・リトアニア両国は非常に近似した安保環境の中で生きている。日リ両国の隣国は、現状と法の支配に挑戦している、謂わば独裁国家である。東アジアと北欧、両方の地域の安全・安定の鍵となるのが「抑止力」である。抑止力とはいかに防衛力を整え備えるかだけではなく、国民が軍を支援し、自分の国は自分で守るという社会全体としてのレジリエンスと即応性を内包している。それは単なる個々人の意思に留まらず、国家としての政治意思の構築であり、国民が勇気を振り絞ることであり、社会全体での準備を進めることである。