日本戦略研究フォーラム(JFSS)が主催した第4 回台湾海峡危機政策シミュレーションは、多様な背景を持つ参加者にとって、台湾海峡危機の段階的進展において想定される日本の対応に関する独自の洞察を得る貴重な機会であった。今回のシミュレーション開催に尽力したJFSS には、改めて深謝申し上げたい。
台湾に駐在するEU・NATO(欧州連合・北大西洋条約機構)加盟国のオブザーバーとして、私は特に想定される危機に対する日本の視点を理解することができた。このことにより、今回のシミュレーションの目的が日本国民への啓蒙、啓発であることを知った。南西諸島と台湾との地理的近接性、想定される危機における日米同盟の役割、日台の歴史的・社会的・文化的絆などの理由から、この視点は重要である。インド太平洋地域に関する制度的な焦点や拡大しつつあるNATO のインド太平洋諸国とのパートナーシップを反映していることから、今回のシミュレーションはEU・NATO 加盟国のオブザーバーにとっても賞賛すべきものであった。この多様性は議論を深化させ、相互理解を発展させるものである。
私は特に沖縄と先島諸島に関する危機対応、現在進行中の台湾のエネルギー大転換におけるエネルギー安全保障の脆弱性、ハイブリッド脅威に対応するための協力の必要性など危機対応における多層統治モデルを注視していた。シミュレーションにおける洞察が斬新かつ示唆に富んでいたことを踏まえ、オブザーバーとしての私の感想を以下に記す。