尖閣問題、竹島と 同じ轍を踏むことなかりしや ―その1―

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元海上保安庁警備救難監 向田昌幸

 1、 尖閣問題の実情と我が国政府に求められている対策
 日本政府の尖閣警備に関する基本的対処方針
 中国は、独善的な理屈を並べて尖閣諸島の領有権を主張し続けているだけでなく、中国海警局(China Coast Guard)に所属する政府公船(以下、「中国海警船」という。)を同諸島周辺海域に差し向けて、我が国の領海に侵入させる等の主権侵害を常態的に繰り返している。それは、事実上の力を背景にした侵略行為だと言っても過言ではないだろう。そんな中国から我が国は、同諸島の有効支配をどのようにして守っていくのか?この命題に対する日本政府の尖閣諸島の警備(以下、「尖閣警備」という。)に関する基本的対処方針は、次の要旨のとおりである。
①尖閣警備は、原則として警察権を行使して対処すること。
②尖閣警備に関する第一義的対処責任は、海上警察機関である海上保安庁が担うこと。
③万一、②の海上保安庁による適切な対処が困難であると認められる事態においては、海上警備行動を発令して海上自衛隊が警察権による尖閣警備を海上保安庁から引き継ぐこと。
④万一、尖閣諸島の占拠を狙う武装勢力に不法上陸された場合においては、同じくまず以って警察や入管等の警察機関が警察権の行使による第一義的対処責任を担う事とし、その場合において警察機関による適切な対処が困難であると認められるときは、治安出動を発令して自衛隊がその警察権による対処を警察機関から引き継ぐこと。