台湾有事政策シミュレーションに参加して

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顧問・元海上幕僚長(元海将) 山村浩

はじめに
 今回の第4 回政策シミュレーションには、昨年に引き続き2 回目の統合幕僚長役としての参加であった。しかも今回は前回と異なり統合作戦司令官役も兼ねてのものであった。
 未だこの世に存在しない統合作戦司令官役としての作戦指揮を行うとあって、どんな困難な環境下での処置判断が求められるのかと不安を禁じ得なかったが、シナリオ上では作戦指揮をする場面は殆どなく、ほぼ統合幕僚長としての任務で終わり安堵した。けれどもシミュレーション中は、常に部隊運用、即ち、作戦指揮をしているつもりで、今現在、陸海空の各部隊がどのあたりに展開して何をしているかを頭の中で想像しながら臨んだ。
 今回リレーエッセイの機会を与えられたので、一連のイベントを終えて思ったことをいくつか記してみたい。
 事態認定の難しさ
 急速に悪化していく事態への迅速な対応は、いかに陸海空部隊の展開を早くするかである。部隊の展開配備が早ければ早いほど不測の事態への初動が十分になるだけでなく、事態を悪化させない「抑止」が大いに期待できるからである。ここでネックとなるのが陸上自衛隊の南西方面の部隊展開であり、部隊の移動・輸送及び土地の利用等は、事態認定に基づく命令がないと多くの国内法の特例措置の手続きが必要となり時間がかかることである。従って、部隊運用上の観点から、「武力攻撃予測事態」の事態認定をいかに早くしてもらうかが焦点となる。