自衛官の処遇に関する新たなアプローチ

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副会長・前防衛事務次官 島田和久

はじめに 
 内外情勢とも不透明感を増しつつある中、求められることは自助努力であり、日本の平和と安全を守る最後の砦である自衛隊の一層の強化が不可欠である。我が国は現在、安全保障関連3 文書に基づき、防衛力の抜本的強化に向けた取組みを進めている。その一方、自衛隊は今、静かな有事に襲われている。それは自衛隊の担い手不足の急速な顕在化である。少子高齢化という、この国を飲み込もうとする大きな流れは自衛隊にも深刻な影響を及ぼしつつある。
 我が国防衛に必要なマンパワーとして法律で認められた自衛官の定数は247,000 人であるが、長い間、予算圧縮のため、自衛官の実際の人数(現員)はこれを下回る状況が続いてきた。3文書を受け、防衛省はより実効性のある防衛力へと、定数と現員の乖離の解消を目指したが、令和4 年度には18,000 人の募集を計画したものの、実際に採用できた人数は計画の約7割に満たない結果となり、2 万人の欠員が生じてしまった。