《オープンディスカッション》

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副会長・前防衛事務次官 島田和久

田北:皆さん、こんにちは。只今よりオープンディスカッションを始めます。今年7月、第4回目の「台湾海峡有事政策シミュレーション」が行われましたが、私は第1回目から拝見し、4回目はメディア担当として参加しました。回を重ねる毎に日本を取り巻く安全保障環境の厳しさを反映するかのように、内容も複雑になり、参加者による判断、決断が難しくなっていることを感じます。例えば4年前に始めた時には、サイバー攻撃やドローンについてはあまり議論はしていなかったと記憶しています。それほど今、日本が直面する脅威が高まっているということです。  
 ただ、この政策シミュレーションには元政府関係者や元自衛官の方々が参加しているのですが、政府だけが考える話ではないと思っています。台湾海峡危機が現実のものになれば、私たちの日常生活に直結する様々な問題が起こります。本日ご出席の民間企業の皆様は、是非、自分の事として、自分の会社の事として、この問題、課題について考えていただきたいと思います。これからシミュレーションに参加した登壇者の皆さんに役割、成果、課題についてお話いただきます。
 まず、「国家安全保障局長」として参加した島田さんからお願い致します。

島田:島田でございます。日本戦略研究フォーラムはこれまで4回に亘り、様々なシナリオで政策シミュレーションを重ねて参りましたが、まず、何故このようなシミュレーションが必要なのかについて申し上げたいと思います。
 日本の危機管理のシステムは、主として自然災害、特に大規模震災を念頭に作られてきました。そして、阪神淡路大震災、東日本大震災を契機に改善されてきたのです。これが大きな特色です。自然は「意思」を持っていませんし、多くの場合、地震そのものは長くは続きません。発災すれば、まずは「人命救助」そして「被害復旧」のフェーズに入っていくわけですが、誤解を恐れずに言えば、対応に高度な政治判断は要しません。総理大臣は「万全を尽くせ」とさえ指示をすれば、警察・消防・自衛隊・海上保安庁は全力を尽くして人命救助に当たる。日本の現場力は世界に誇るものです。
 しかし、台湾海峡危機をはじめ国家間の紛争では、そうはいきません。