インドの首都ニューデリーにおいては1月から2月初めにかけての時期が1年で最も過ごしやすい季節である。暑くなく、かと言って寒くもなく、実に心地よい。空気も清涼で多くの花々が一斉に咲き誇る。2 月の後半からは1 日に1 度ずつ気温が上がり5 月になると50度近い酷暑の季節を迎える。その後は気温は多少下がるがその代わり湿気が増し、耐えがたいほどの蒸し暑い夏となる。かつてニューデリーの日本大使館に若き書記官として勤務した私はこの気候の激しい変化に翻弄され辟易した経験がある。
2ヵ月ほど前の2月上旬に久しぶりにインドを訪問した。ニューデリーでは好天にも拘わらず1 日を通して靄に覆われ太陽の見えない大空に大気汚染の影響を感じたが、それでも「年間最高の季節」を大いに楽しむことは出来た。オールドデリー地区は相変わらずゴミが散乱する薄汚い街並みに貧し気な人々が溢れていたが、南側のニューデリーに入ると緑豊かな別世界が広がる。昔と違うのは整備された道路網と地下鉄の存在、そして渋滞を引き起こしているモータリゼーションの加速現象。また、週末・平日を問わず幟のぼりを掲げて道路脇を行進する何千というヒンドゥー教の信者たちの行列も昔はあまり見なかった光景である。