第175回
『令和5年版防衛白書』説明会

長野禮子
 
 この10年、我が国周辺の安全保障環境は、隣国である中国、ロシア、北朝鮮が軍事力を拡大し、活発化してきたことで激変した。
 今回の白書は、昨年12月に策定された新戦略3文書を踏襲したものであり、「真に国民を守り抜ける体制を作り上げる」との決意を表現する観点から検討した。表紙の題字は、現役自衛官が揮毫し、防衛省・自衛隊の「新たな決意」を表現している。
 白書の構成は、「第I部 わが国を取り巻く安全保障環境」「第II部 わが国の安全保障・防衛政策」「第III部 防衛目標を実現するための3つのアプローチ」「第IV部 共通基盤などの強化」の4部から成る。
 第II部には「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」に関する章が新設され、第III部の「わが国自身の防衛体制」には、「わが国の防衛力の抜本的強化と国全体の防衛体制の強化」「情報戦への対応」「継戦能力を確保するための持続性・強靭性強化の取組」に関する節、「日米同盟」に関する章には「同盟調整機能の強化」に関する節が新設された。
 大きなポイントは、新戦略3文書に沿って「防衛力の抜本的強化」を速やかに実現する必要性が盛り込まれ、反撃能力の保有はこれに含まれる。
 防衛予算については、防衛力の抜本的強化のため、2027年度には2022年のGDP比2%(約11兆円)に達する措置が採られ、5年間で43兆円という、これまでとは大きく異なる予算規模が確保されたことを明記。これにより、将来、防衛力の中核となる「スタンド・オフ防衛能力」「無人アセット防衛能力」などの予算を大幅に増やし、主要な防衛施設の強靭化への投資も加速することとなる。
 また、外国の気球などが我が国の許可なく領空に侵入する場合、武器の使用を含めてより一層厳正に対処することや、武力攻撃事態における防衛大臣による海上保安庁の統制要領の策定、宇宙・サイバー・電磁波分野における専門部隊の新編・拡充、認知領域を含む情報戦への対応、十分な継戦能力を確保するための持続性・強靭性強化の取り組みなどについても記述された。
 新戦略3文書には、一昨年から実施しているJFSSの「台湾海峡危機政策シミュレーション」から抽出された問題点への取り組みが数多く反映された。早期の具現化により、刻々変化する国際情勢に対応するべく強靭な国家造りに貢献して貰いたい。
テーマ: 『令和5年版防衛白書』説明会
講 師: 茂木 陽 氏(防衛省大臣官房報道官)
日 時: 令和5年9月6日(水)14:00~16:00
ø