5月から6月にかけて、米国は国内外で激しい動きを見せた。5月の「トランプ関税」発動。6月のロサンゼルスにおける不法移民の取り締まりに反対する大規模デモ。6月22日の米軍によるイランの核施設への空爆―などだ。
今回も古森義久氏のご配慮により、約1年ぶりにフレッド・フライツ氏をお招きし、第二次トランプ政権の取組について詳しくお話いただいた。
まずフライツ氏は、現在の第二次トランプ政権にまつわる混乱は、バイデン前政権の無能が招いた「揺り戻し」に過ぎない。イラン核施設空爆は「新たに不必要な戦争を起こさない」というトランプ発言と矛盾しているとし、トランプ支持者の間で動揺が広がった―
当初、トランプ氏はイランに対し2週間の猶予を与えたが、交渉を長引かせることで相手国を自分の望む方向へ操作しようとする同国のやり方に激怒したことが、結果的にイラン攻撃となった。このことでトランプ氏は孤立主義者ではなく、決断が出来る強い指導者であることを証明したと同時に、「予測不可能」な行動を世界に知らしめた。
トランプ氏の「関税」措置についてフライツ氏は、この政策の変更を望んでいると述べた。トランプ氏自身は世界経済の構造的な不均衡を是正するために「自由で公正な貿易」を目指しているとし、トランプ氏はもとより、知日派かつアジア全体を見据えているルビオ国務長官も日本を強く支持していると強調した。最近、政権内で影響力を増しているベッセント財務長官も日米の特別な関係を深く理解している。現在米国は対中東政策に集中せざるを得ない状況にあり、アジア太平洋地域の日本を始めとする同盟国や仮想敵国の中国に目を向ける余裕がないが、あと半年もすれば同地域が再び政権にとっての主眼に戻るであろうとフライツ氏は述べた。
質疑応答では、未だ明言を避ける第二次トランプ政権の対台湾政策を問うた。同氏は「MAGA派の中には米国が不必要な戦争に巻き込まれることに反対する人々もいる。だが、彼らは『抑止と力による平和』を通じて世界の安定を望むトランプ大統領とルビオ国務長官とは一線を画している。大統領は自身の方針を堅持するためにも台湾を守るだろう」と答えた。
だが、トランプ氏は安保・貿易で中国への強硬姿勢を崩さない一方、習近平との対話の扉は常に開き、より良い関係を目指そうともしている。「予測不可能」はトランプ大統領の戦略であり、同盟国日本といえども今後も従来の日米関係が維持されると考える時代は既に終わったと認識すべきだろう。日本はこれからトランプ氏の「予測不可能」を前提に、米国依存からの脱却も踏まえ、不透明な国際情勢に対峙する独自の政策、戦略を構築することになろう。
剣道に「守破離」という言葉があるのを思い出した。まず師の教えを忠実に守り、次に学びを重ねて既存の型を破り、最後は自身の流派や型を確立し師の教えを離れるというものだ。第二次安倍政権の尽力でようやく「破」に到達することが出来た日米同盟をいよいよ真の対等な同盟にすべく、日本は「離」を目指す段階なのではないか。