国民と防衛省・自衛隊との距離を縮めるために工夫された『令和7年版 防衛白書』の表紙は、若者世代に人気のイラストレーターによる陸海空の自衛官が描かれている。コンセプトは自衛隊に対する「親近感」「安心感」「信頼感」だという。
本文の特色としては、「我が国を取り巻く安全保障環境」に続き、戦略三文書策定後、3年目として「防衛力の抜本的強化」の進捗、また、今年3月に新設された防衛省・自衛隊の「統合作戦司令部」や「自衛官の処遇・勤務環境の改善」などが丁寧に記されている。
JFSSが過去4回に亘り開催した「台湾有事政策シミュレーション」では、安倍元総理の至言「台湾有事は日本有事」との認識のもと、日米台の連携はもとより、我が国の安全保障に関する法整備の不備が抽出され、それを改善すべく三文書にも反映された。『白書』には台湾の軍事予算や装備を図で示す一方、迫りくる中国の脅威に対する台湾の取組などについても紙幅を割いていることから、台湾問題が身近に論じられることを期待したい。
とは言え、中・露・北朝鮮という核保有国を隣国にもつ我が国の安全保障環境の厳しさ、また、欧州、中東を始めとする戦争や紛争に対する国連の機能も麻痺したままの現在、11月に結党70年を迎える自民党は党是の憲法改正には遠く及ばず、しかも現憲法の下で専守防衛を守り抜くという姿勢は、真に国民の信頼を得て、平和を維持することには繋がらない。
日本維新の会は18日、「戦力不保持」を謳った憲法9条2項を削除し、自衛隊を国防軍として明記した「21世紀の国防態勢と憲法改正」を提言するという。
厳しい安全保障環境を打破するためには、防衛力を向上させ抑止力の強化を目指すのは言うまでもないが、それを実現するには、何より我々国民の「国を守る」という強い意思がなければ国は動かない。
新興政党が躍進した今回の参院選を見れば、最早「憲法改正」は自民党の専売特許ではなくなってきている――その証左としての結果だったのかも知れない。