麗澤大学特任教授の江崎道朗氏が、高市政権のインテリジェンス改革の現状と課題について講演した。江崎氏は、インテリジェンス活動の主な類型として、①国家安全保障に関する情報収集・分析・評価活動②防諜活動(カウンターインテリジェンス)③サボタージュ対策(テロ、要人暗殺、インフラ破壊といった破壊活動への対策)④影響力工作への対処⑤アクティブ・メジャーズへの対応―を挙げた。そのうえで、国家安全保障を支える4つの要素「DIME」+Tの重要性を指摘する(Diplomacy=外交、Intelligence=情報、Military=軍事、Economy=経済、Technology=技術)。これらは、日露戦争後、陸軍参謀本部がロシア、米国、ドイツ、フランスを仮想敵国とする国家戦略を明記した「帝国国防方針」を策定し、軍だけで決定された国家戦略によって外交・インテリジェンス・経済の要素が軽視され、日本の失敗につながったことの反省に由来すると説明した。
第2次安倍政権の成果として、江崎氏は国家安全保障会議の創設、特定秘密保護法の制定、平和安保法制の整備を挙げた。しかし、インテリジェンス分野では情報共有の統制、情報要員の不足、秘密保護体制の弱さなど6つの課題が残っていると指摘した。
一方、米国のケースについても説明。9.11の失敗に情報統合の欠如があったとして、2004年の「情報改革・テロ防止法」を制定し、情報アクセス権、予算策定権、人事権などの権限を持つ国家情報長官(DNI)の新設、国家テロ対策センター(NCTC)の創設、情報共有環境(ISE)が構築されたことを紹介した。
今国会で成立した国家情報会議設置法については、首相を議長とする情報会議の新設と、600名規模になるとされる国家情報局の機能について説明。同法の所管事項として、重要情報活動の重点設定、関係機関の連携協力、情報収集衛星の運用、外国情報活動への対処を挙げた。
江崎氏は、今後の課題として特定秘密保護法の改正、政治家のセキュリティクリアランス対象化、行政通信傍受の解禁などを提起。ただ、政治家については、情報がわたることによる情報漏洩リスクの増大と、高度な情報を正しく理解・評価するための政治家の知識・見識が課題だと指摘した。また、これまで政治家が高度な情報を使いこなせないため、情報機関は情報レベルを下げて単純化して政治家に報告する傾向があったことも明かした。
江崎氏は、インテリジェンス軽視・対米依存・省庁縦割りの3つの宿痾克服が今回のインテリジェンス改革の目的だと述べた。また、統治機構改革を考えてきた立場から、素晴らしい情報は政治家が使ってこそ意味があり、政治家が使いこなせる仕組み作りが重要だと強調。現場は戦前も戦後も優秀で、問題は統治機構と政治家にあると指摘した。国民監視のためではなく、政治家をどう変えるかがインテリジェンス改革の本質だと述べた。