半年ぶりにケビン・メア氏をお招きしての「Chat」である。以下メア氏の主な話を記す。
中国:我が国周辺には中国・ロシア・北朝鮮の脅威が付き纏う。特に尖閣周辺の接続水域を航行する中国海警局の船は連日のように目撃されている。中国は、2030年から35年には、少なくとも350機の第5世代戦闘機を配備する可能性がある。仮にその時点で中国との戦闘を考えた場合、米国だけで対処することは困難であり、日米による共同対処が必要となる。中国の脅威が軍事的、戦略的、経済的にも台頭してきているということの証左である。
香港:6月からの「逃亡犯条例」制定に激しく反対する大規模な抗議活動は、「一国二制度」を揺るがす大問題となっている。10月1日の国慶節(建国記念日)までは、暴力的制圧は控えるが、その後は状況によっては強圧的手段に出る可能性がある。仮に、中国本土の武装警察がデモ参加者に対する暴力的制圧を行った場合、台湾の独立意識が高まることは間違いない。
台湾:香港の大規模デモが「台湾独立運動」に影響し、台湾海峡有事に発展した場合、日米同盟が有効に機能することになる。中国は日米同盟に亀裂を入れたいと常に考えている。米国が台湾有事に対して関与することは、たとえトランプ大統領が躊躇しても、議会が関与を強く求めることになろう。
イラン:辞任したボルトン前大統領補佐官による対イラン政策は正しいやり方であった。米国の核合意離脱は好ましくない。安倍総理がイラン訪問中の6月13日、ホルムズ海峡付近において日本船籍のタンカーが攻撃された。今後、このような出来事に対して日本はどのように対処していくのかはChallenge(難題)であり、日本は中東に石油を依存していることからも大変重要な問題である。日本はこの中東地域における平和と安全に貢献する必要がある。今回の出来事に対しても安倍総理の下では何かしらの貢献が行われるものと信じている。6月20日、イランはホルムズ海峡上空において米軍のグローバルホーク(無人航空機)を撃墜した。これに対してトランプ大統領は何ら反撃をしなかった。この対応は適切ではなく、残念であった。
北朝鮮:今年に入ってから飛翔体(短距離弾道ミサイル等)の発射を繰り返している。これらは国連決議に違反するが、トランプ大統領は問題視していない。その理由は、発射された飛翔体が米国に到達する飛距離を有していないことや来年の大統領選挙に向けた外交成果として、北朝鮮との非核化の合意を達成したいとの意図があるためだ。ボルトン氏の後任は外交安全保障の分野では聞いたことがない人物である。ホワイトハウスは健全な状況ではなく、北朝鮮に対する圧力も低下している。
F-2戦闘機の後継機について:米国の提案は可能な限り日米の最先端技術を用い、最新鋭の第5世代戦闘機を共同開発することである。日米が中国に対して共通の脅威認識(中国は2030年には戦闘機の数量が米国を超える)を持ち、有効に対処する必要がある。F-2後継機は日本のプログラムであるため、その装備は日本が決めることができる。
最後に:以上のことを踏まえ、米国では、安保法制の下で日本の集団的自衛権が認められたため、真の同盟になったと考える人が多くなっている。憲法9条の制約はあるが、従来の盾(防御は自衛隊)と矛(攻撃は米軍)という考え方は変わってきている。これからは何が防衛で何が攻撃かの議論は意味がない。日米同盟はうまく機能しており、米国は超党派で支持している。