第139回
「展望の見えない日韓関係」

長野禮子 
 
 
  今回は元駐韓大使の武藤正敏大使をお迎えして、史上最悪と言われている日韓関係についての分析と韓国の現状について詳しくお話いただいた。
 文在寅大統領は昨年、自らの支持層に向けた政策を進めてきたが、悉く失敗。米朝の仲介役も果たせず、経済面では30~40代の失業率が増加し、曺国前法相を庇い切れなかったにも拘わらず、高支持率が続いている。この世論調査自体に、韓国国民も疑いを持ち始めているという。
 また、所謂「慰安婦」「徴用工」問題、レーダー照射問題、「ホワイト国」除外に対しても、韓国は一切日本側の主張を受け入れることなく、支離滅裂な理屈を付け日本への対抗手段を講じる一方、中朝露に接近して「レッドチーム」入りを目論む姿勢を続けている。大統領の最重要責務である安保政策を疎かにしている文政権は、非核化よりも38度線の火力が恐いとみて、非核化への意識が強いとは思えない。日韓基本条約や日韓合意も履行されず、自ら国際社会での立場を貶めている韓国に内政外交の安定はなく、ここに文在寅政権の国益無視の本質が見える。
 文政権は今後も、①積弊の清算 ②左派長期政権の樹立 ③北朝鮮との融和 ④非核化――を揚げながら南北統一の方向に向かっていくだろう。これはつまり、保守政権のやってきた業績を全て否定し、親日派の排除も強まることを意味するということか。
 武藤氏は更に、朴槿恵政権は僅かな側近との政権運営で失敗したが、文政権は人事を固めているので守りに強い。立法・行政・司法の三権を全て抑え、既に「独裁全体主義国家」といっても過言ではない状況にある。朝鮮日報と中央日報以外は政権批判をせず、放送局のトップも革新系に全て代え、言論を支配している。ネットメディアも文政権支持派が占めており、そこから追い出された人達が文在寅叩きで立ち上げたネットメディアがあるが、まだ数十万単位で影響力は小さい――と語る。
 展望が開けない日韓関係ではあるが、東アジアの安定のために、日本は決して韓国のこうした動きに棹差すことのないよう努力することが肝心であり、文氏が何を言おうと妥協してはならず、何をするかを見極めることが重要だ――と締め括る。
テーマ: 「展望の見えない日韓関係」
講 師: 武藤 正敏 氏(元大韓民国駐箚特命全権大使)
日 時: 令和2年1月22日(水)14:00~16:00
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