Key Note Chat 坂町

第89回
「平成28年版『防衛白書』の説明」

 長野禮子

 今、我が国の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とする日本国憲法前文が悉く裏切られている。この広い世界に「諸国民の公正と信義に信頼」する前文を書き込んでいる国家が他にあるのだろうか。
 今年の『防衛白書』は従来の内容に比べ、より踏み込んだ強い文言となっており、我が国が直面する切迫した脅威に対する認識のレベルが上がっていることを示している。
 今回は土本審議官をお招きし、第Ⅰ部「わが国を取り巻く安全保障環境」、第Ⅱ部、「わが国の安全保障・防衛政策と日米同盟」、第Ⅲ部「国民の生命、財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組」、そして「平成29年度概算要求の概要」について詳しくご説明いただいた。

テーマ: 「平成28年版『防衛白書』の説明」
講 師: 土本 英樹 氏(大臣官房審議官)
日 時: 平成28年9月13日(火)14:00~16:00

第88回
「ナショナリズムのグロバール化」

長野禮子

 かつて、世界経済はG7が世界のGDPの約80%を占め、現在は約50%。  
 それに引き換え、1997年、アジア通貨危機がきっかけでスタートしたG20 は今や世界のGDPの約90%になった。  
 今回米国より一時帰国した渡部悦和氏は、イアン・ブレマー著『「Gゼロ後」の世界―主導者なき時代の勝者はだれか』を挙げ、その中で、世界は最早リーダーなき不寛容で利己的な世界へと傾きつつあり、G7(Group of seven)やG8(Group of eight)、G20(Group of twenty)といった グループを無くす傾向に向かっているとの指摘を紹介した。  
 一方、自由と民主主義を標榜し、広く世界平和を目指してきた時代から、民族や国境を越えて紛争が絶えないこの地球は、まさに「炎上する世界」と化し、強いリーダーの存在が期待される。  
 ロシアは軍事力を背景としてウクライナを併合し、シリアにまで手を伸ばす。中国が推し進める「海の長城」計画、中東諸国の不安定、ISIS等による国際テロ、英国のEU離脱、難民問題、債務危機・・・。  
 今世界に求められているのはプーチン露大統領のようなリアリストであり、決してきれい事だけのドリーマーでは乗り切れないと話す。米国の大統領選の行方も目が離せない。  
 多くの矛盾を抱えている複雑な現実を思い知らされる。 
テーマ: 「ナショナリズムのグロバール化」
講 師: 渡部 悦和 氏(JSFF政策提言委員・ハーバード大学アジアセンターシニアフェロー・元陸自東部方面総監)
日 時: 平成28年8月3日(水)14:00~16:00

第87回
「南シナ海情勢及び東シナ海情勢」

長野禮子

 前回に引き続き7月12日のオランダ・ハーグ仲裁裁判所の裁定結果についてである。
 フィリピンの主張をほぼ全面的に受け入れた今回の裁定について、中国の反応は相変わらず強気を通してはいるが、内心では国際社会からの信頼を失うことへの焦りが感じられる。
 しかし、現在進められている南シナ海の人工島建設や軍事拠点化は緩めることなく進められている。国連安保理の常任理事国という立場にありながら、国際法の遵守を拒否し続ける中国は、次なる手を打ちつつ東シナ海への挑発を抜かりなく続けることだろう。
 今回は元自衛艦隊司令官の香田洋二氏をお招きし、米国での発表も含め詳しくお話しいただいた。
テーマ: 「南シナ海情勢及び東シナ海情勢」
講 師: 香田 洋二 氏(JFSS政策提言委員・元海自自衛艦隊司令官)
日 時: 平成28年7月29日(金)15:00~17:00

第86回
「南シナ海仲裁裁定みる中国の侵略的海洋進出」

長野禮子 

 ハーグの仲裁裁判所は7月12日、南シナ海で次々と人工島を造成し、軍事拠点化を進めている中国の海洋進出は明らかに国際法違反であるとし、フィリピンの訴えをほぼ全面的に受け入れる裁定を発表した。
  これに対し中国は裁定発表の前からフィリピンに軍配が上がることを恐れていたのか、裁定結果は「紙くず」だとの発言を繰り返し、人工島の軍事化を更に進める構えである。 
  中国の主張する「九段線」については、ベトナムやフィリピンなどの周辺国や日米などの関係国も「航行の自由」を巡り様々な手を打ってきたが、国際的な司法判断が下されたのは今回が初めてである。 
  今回は国際法が専門の髙井晋氏をお招きし、詳しくお話しいただく。 
テーマ: 「南シナ海仲裁裁定みる中国の侵略的海洋進出」
講 師: 髙井 晉 氏(JFSS常任理事・防衛法学会理事長)
日 時: 平成28年7月22日(金)14:00~16:00

第85回
「大統領選挙を迎えるアメリカで何が起こっているのか」

長野禮子
 
 米国で展開されている次期大統領選。約1年をかけてのポスト・オバマをめぐる戦いは半年が経った今、当初泡沫候補と言われていたドナルド・トランプ氏が、共和党の候補指名を勝ち取り、一方、民主党は、ほぼヒラリー・クリントン氏になることが有力視されている。 
 我が国の新聞にも、この大統領選、殊にトランプ氏の発言をめぐっては様々は報道がなされてきた。もし、トランプ氏がこのまま勝ち続けたとしたら、従来の日米関係とは趣の違うお付き合いになるのではないかと懸念する意見、逆に、トランプ氏が大統領に就任すれば、平和ボケの日本人の目が覚めるのではないかという意見が聞かれる。 
 国際社会における米国の立ち位置が変化している中で、米国民の国益追及における価値観も従来とは異なってきつつあることも認識すべきであろう。 5月25日付の産経新聞には、「各国の駐留米軍に対する費用負担」が掲載されていた他、JFSS顧問のケビン・メア氏、上席研究員のロバート・エルドリッヂ氏のコメントも掲載されるなど、結果の出る11月までの選挙戦に目が離せない。 
 今回は「大統領選挙を迎える米国で何が起こっているのか」と題して、トランプ現象・サンダース現象の背景・米国民に鬱積する不満・オバマ外交の欠陥・世界の警察官にならないアメリカ・・・等々について、筑波学院大学名誉教授の浅川公紀氏をお迎えし、詳しくお話しいただく。 

テーマ: 「大統領選挙を迎えるアメリカで何が起こっているのか」
講 師: 浅川 公紀 氏(JFSS政策提言委員・筑波学院大学名誉教授)
日 時: 平成28年5月25日(水)14:00~16:00