Key Note Chat 坂町

第101回
「技術的優越の確保と優れた防衛装備品の創製を目指して」
―防衛装備庁の取り組み―

  長野禮子 

 近年の国際情勢の変化に伴う我が国の安全保障環境は益々厳しく複雑さを増している。目前の脅威から我が国を守り、大きな抑止力を生むには、精強に訓練された部隊育成と、我が国の高い技術力を一層強化すると共に、それを活用した装備品の研究開発を押し進め、技術的優越を確保しなければ強靭な国家建設は実現しない。
 今回は2015年10月1日に発足した防衛装備庁の渡辺秀明長官をお招きし、以下のことについて詳しくお話いただいた。


1、防衛装備品等の研究開発について
 ア、防衛装備庁における4つの方針
 イ、予算から見る研究開発を取り巻く環境
 ウ、研究開発関連の部署と業務

2、防衛技術戦略について

テーマ: 「技術的優越の確保と優れた防衛装備品の創製を目指して」 ―防衛装備庁の取り組み―
講 師: 渡辺 秀明 氏(防衛省防衛装備庁長官)
日 時: 平成29年5月10日(水)14:00~15:30

第100回
「蔡英文政権の一年と今後の課題」

  長野禮子 

 台湾は2016年5月20日、それまで8年間、一貫して親中路線を進め、政権末期には1949年の中台分断後初の「両岸の指導者」同士として、中国の習近平主席と歴史的な首脳会談を実現した国民党・馬英九政権から、民進党・蔡英文政権に交代した。そしてそろそろ一年が経つ。
 日本は日台が共有する歴史的経緯や、地政学的安全保障の上からも最重要地域であり、謂わば「運命共同体」としての認識の下、72年の断交以降も深い交流が続いている。「一つの中国」を唱える中国と一線を画す蔡政権の誕生は、同時に我々日本国民にとって政治的にも心情的にも歓迎するものであった。
 しかし、親中路線を加速し続けた馬政権の政治的経済的残滓はそこかしこにあり、蔡総統の政権運営は決して容易ではないようだ。トランプ米大統領は就任直後、中国の習主席に先立ち蔡総統との電話会談を実現した。が、米国は「台湾は中国の一部ではないが、国際社会での主権国家としての立場は認めない」との位置付けである。また、「中華人民共和国」は“チャイナ”、「中華民国」は“チャイニーズ”と実に紛らわしく、中国と中華民国との線引きが出来ていない。2007年、当時の陳水扁総統は国連の潘基文国連事務総長(当時)に「台湾」名での国連加盟を求める親書を送ったが、「台湾は中国の一部」との理由でこれを受け入れなかった。1971年、国連は「台湾は中国の一部」であるとの決議はしていない。 
 一方、台湾政府も「中華民国」と「台湾」のどちらかという明確な立場を主張していない。台湾はこれまで一刻たりとも中国共産党の支配を受けたことはないのだが、これも謂わば「台湾の悲哀」の一面なのか。 
 国民党、民進党と政権交代しても中台関係は時には微妙に、時には激しい緊張関係を伴いながら現在に至る。しかし実態としては「台湾=事実上の国家」として生き続けていると許氏は語る。台湾人としてのアイデンティティを確立した今、未だ独立国家としての主権を有することが許されない現実は、実に哀しい。国際社会の理解を得るための具体的努力を、我々日本人が躊躇わずに堂々と進める時代はいつ来るのだろうか。
テーマ: 「蔡英文政権の一年と今後の課題」
講 師: 許 世楷 氏(JFSS特別顧問・元台北駐日經濟文化代表處代表)
日 時: 平成29年4月12日(水)14:00~17:00

第99回
「弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な評価に関する提言」

  長野禮子 

 今春は彼岸を過ぎても行きつ戻りつの天気で、なかなか予報通りの開花とはならなかったが、ここにきて窓外もやっと薄桃色の景色を楽しめるようになった。満開の日も近い。
 3月末、自民党安全保障調査会は「敵基地攻撃能力」の保有に関する提言書をまとめ、政府に提言した。この「敵基地攻撃能力」(政府は自民党案を受け、「敵基地反撃能力」とした)の保有に関しては、これまで「憲法9条」「専守防衛」の原則に反しないとなっていたが、何も進展はなかった。
 このことは皮肉にも北朝鮮の核実験やミサイル発射等の挑発行為が特に最近頻度を増し、我が国のEEZに落下したこと等による航空機や船舶への脅威と、移動式発射台や潜水艦からの発射、固形燃料による弾道ミサイル発射やロフテッド軌道による発射等々の技術を持ちつつあるとみられる新たな段階の脅威に突入したとの認識の下、自民党がやっと重い腰を上げたということだろう。
 北朝鮮は、米中首脳による北朝鮮問題についての会談を前日に控えた今日(5日)もミサイルを飛ばし、日本海に着弾した。国内メディアやイデオロギーによる反発や抵抗があったにせよ、遅きに失した観は否めない。が、「新たな段階の脅威」を日米共有の認識として、北朝鮮の暴挙を挫き、国家国民の安全を確たるものとするための一歩となったことに期待したい。
 民進党の蓮舫代表のように、「平和国家の礎が、ガラガラと音を立てて崩れるように思えて非常に懸念している」などと呑気なことを言っている場合ではない。抑止力強化に伴う防衛予算の増額も、今や多くの国民の理解の範囲にあるのではないか。
テーマ: 「弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な評価に関する提言」
講 師: 田村 重信 氏(JFSS政策提言委員・自由民主党政務調査会審議役)
日 時: 平成29年4月3日(月)13:00~14:00

第98回
「トランプ政権の東アジア安全保障政策」

  長野禮子 

 トランプ政権発足から2ヵ月が経過した。徐々に新政権の政策やトランプ氏の人物像が浮かび上がる中、世界は経済界出身の大統領がどういう国家運営をするのか、予測の難しい新たな時代の始まりを注視している。さしずめ日本にとっては、対中宥和政策をとり続けた前政権の政策転換を表明した新政権と、日米両首脳を始め外交・安全保障のトップとの価値観の共有が確認できたことは喜ばしいことである。が、同時に、中国・北朝鮮からの脅威に対する盤石な体制づくりが喫緊の課題となっている我が国の状況、南シナ海における中国の横暴な振る舞いを阻止し、「航行の自由」を守るための具体的戦略と行動を完遂するためには、周辺国との協調を促進させ、日米同盟の強化と深化が更に重要になるのは理の当然。 
 建前ではなく本音を前面に出すトランプ政権がスタートした今こそ、従来の同盟関係に甘んずることなく、我が国も「普通の国」になる好機と捉え、その果たすべき役割について国民世論と共に真剣に考え、行動する時が来たのではないか。そのためには、米国からの日本に対する厳しい要求にも応える努力を怠ってはならず、それが実行され成し得た時に、初めて同盟国としての「価値観の共有」が実を結んだと言えるのではないか。
 今回は、元米海兵隊大佐であり外交官も歴任したグラント F・ニューシャム氏に、トランプ政権の安全保障政策について幅広い視野でお話いただいた。
テーマ: 「トランプ政権の東アジア安全保障政策」
講 師: グラントF・ニューシャム 氏(JFSS上席研究員・元米海兵隊大佐)
日 時: 平成29年3月21日(火)14:00~16:00

第97回
「南西諸島防衛を強固にするために」

  長野禮子 

 トランプ氏が米国大統領に就任して1ヵ月半。政権幹部の人事は難航しているようだが、2月に来日したマティス国防長官、更に3月15日来日予定のティラーソン国務長官は我が国にとっても歓迎すべき人事だと言われている。
 トランプ大統領は2月末、国防予算の10%(約6兆900億円)増を予算案に取り込むと発表。実現すれば「歴史的な拡大」となるそうだが、日本はどうか。常態化している中国・北朝鮮の脅威に対する備えは十分と言えるのか。
 北が日本と韓国を攻撃すれば米国は100%応戦する。しかし、中国がもし南西諸島を攻撃してきても、日本はそれを防ぐための訓練すらしていないのが現状だ。早く米海兵隊並みの力をつけると共に、統合部隊をつくり、そこに米海兵隊司令部を置けば「中国への抑止」が機能する――と、今回のゲスト、アワー氏は言う。更に、米海軍と海上自衛隊の関係は良好だが、陸海空の統合運用は不十分だと指摘。「自分の国は自分で守る」姿勢を示さなければ、同盟国米国は出て来ない。 
 6日、北朝鮮は4発のミサイルを発射し、うち3発が日本のEEZ内に落下。また南西諸島における中国の脅威も続いている現状にありながら、国会では野党が責め立てる大阪の小学校の問題ばかりが喧しい。もっと冷静になって我が国の正面にある安全保障問題を真剣に議論してほしいものである。

テーマ: 「南西諸島防衛を強固にするために」
講 師: ジェームスE・アワー 氏(JFSS特別顧問・ヴァンダービルト大学名誉教授)
日 時: 平成29年3月7日(火)14:00~16:00

第96回
「トランプ政権に期待すること、懸念すること」

  長野禮子 

 トランプ大統領は就任した1月20日から1月末までに18の「大統領令」に署名し、60の公約のうち既に15に着手している。スピード感をもって政治をしている。日本人には馴染みのない「大統領令」だが、過去最高はF・ルーズベルトの3728、最近ではクリントンの364、ブッシュの291、オバマの276となっている。平均すれば739,5 というから、トランプ氏の大統領令もこれからどんどん出ることだろう。
 日本は米国の大統領が代わるたびに日米関係はどう変化するだろうかと心配し、ああでもない、こうでもないと専門家等々のコメントが報道されてきたが、2月3日来日したマティス国防長官は「尖閣諸島は日米同盟第5条の適応範囲に含まれ、それを損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する」と、中国を念頭にした共通認識を表明。北朝鮮の核・ミサイル問題、更に「核の傘」を含む拡大抑止にも言及し、従来の日米同盟の堅持と更なる深化に対する認識も確認された。
 ケビン・メア氏は、トランプ政権の安定までには時間がかかり、国内の混乱も暫く続くだろうが、2月10日、安定した政権運営をしている安倍首相とトランプ大統領との会談は双方の信頼関係構築に不可欠であり、外交・安全保障に加え経済面での問題も克服できるだろうと話す。
テーマ: 「トランプ政権に期待すること、懸念すること」
講 師: ケビン・メア 氏(JFSS特別顧問・元米国務省日本部長)
日 時: 平成29年2月7日(火)14:00~16:00