昨日1月17日、フジテレビでちょっと変わった番組「アジア友好か紛争か!? 日中韓の代表が本音で2時間言いたい放題!!」が放映された。例のように出演者の無知を視聴者が楽しむ類の低俗な番組だから許されるとは思うのだが、大声で自国を擁護して他国をけなして合って喜ぶという要素も加わり、危ない放言の数々が面白かった。
なでしこジャパンのFW、丸山桂里奈(カリナ)さんも特別出演し、中国や韓国、特に中国の選手は審判から死角になる位置とみると丸山選手のパンツを引きずり下ろしたり、シャツをつかんで倒しにかかるなど、故意のラフプレーが極めて多かったことを披露した。この発言に対して中国擁護チームに加わっていた中国の新聞記者は、「丸山さん、そんなに中国の悪口を言うなら丸山桂里奈という漢字を使わせないよ」と反撃した。この一言に対する日本チームからの反撃は見られなかったが、私は日本から中国に逆輸入された漢語は極めて多く、今でも日本語がしきりにパクられていることを教えてあげたかった。
幕末以後、福沢諭吉や中江兆民らが西洋の概念や思想を日本へ導入しようと西欧の言語を盛んに日本語化した。明治維新で近代化の道を歩み始めた日本から学ぼうとする中国人が激増し、年間2万人もの若者が日本に押し寄せたという。孫文の辛亥革命の頃の話であり、中国の歴史では珍しく「謙虚な中国」がちょっと見えた時代であった。この頃、つまり20世紀初頭に中国がせっせと逆輸入した和製漢語には、抽象名詞や科学用語が極めて多かった。例えば文化、民族、法律(憲法という言葉など)、理性、政治、経済、民主主義、共産主義、物理、質量、空間などがこの類である。抽象的な概念を表す言葉は殆ど全て和製漢語であると言っても過言ではない。
そもそも「哲学」という言葉も和製漢語である。「桂里奈という漢字は使わせないよ」と言った中国のあの新聞記者に、貴方の国名である「中華人民共和国」という7文字の中で、「中華」を除く5文字までもが和製漢語ですよと教えてあげたら、彼はどんな顔をしただろうか。その場に私が居なかったのが残念である。
このグローバルな時代に、言葉も世界を駆け巡るのは当然であり、日本でも「スマホ」など年寄りを悩ませる言葉が氾濫している。今でも中国は盛んに日本語を取り入れている(宅急便、人気、達人、新登場、超XX、過労死、痩身、美白・・・。果ては「宅男、宅女(オタク)」なども。
孫文の頃の中国人にとっては、新たな知識を吸収するために必要な和製漢語であったが、現在のように「反日」が行き届いた中国でも、文化的に優位な日本を認めて、日本を慕って使っていると聞けば、意外に可愛い部分があるのか
も知れないと思ったりする。
(2012・1・18)
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