理事・政治評論家
 屋山太郎



  

今、国民が期待する政党・政治団体とは
―現実から乖離し続ける自民・民主の政権交代―

 各新聞社が行う世論調査で一致した傾向を示しているのは、民主党と自民党の政党支持率が極めて近いことだ。日経新聞(4月23日付)調査では自民党支持25%、民主党支持23%、みんなの党6%である。約1ヶ月前の産経新聞調査では自民党16.3%、民主党13.7%、みんなの党6.1%となっている。自民党は民主党凋落の分を吸収しておらず、支持率低落を続けている。この中でみんなの党を支持する層は安定的に続いていることがわかる。
 この傾向を見て言えることが2つある。
 1つ目は、民主と自民は互いに政権交代のできる政党ではないこと。2つ目は、行革を切望する世論はみんなの党の支持を続けていること――である。
 特に野田政権は自民党・野田派といってもよいほどの官僚依存体質である。今や内閣支持率が30%を切るほどに人気が離散している。この理由は「自民党政治と変わらない」と国民に認識されたからだろう。
 自民党政治を一言でいえば「業界政治」だ。農協、医師会、石油業界など2千もの業界団体を作って、予算で業界の面倒をみる手口である。民主党が新しい政治をやるというなら、こういう団体の対極に立ってこそ、新しい政策ができる。既成のワクを壊してこそ新成長戦略が生まれるのだが、民主党は政権を獲ると、団体に働きかけ、路線を「民主支持」に切り換えさせた。その象徴が医師会の会長選挙だろう。この4月、民主の政権落ちを見越して自民寄りの会長を選出した。
 既成の団体を民主党に向かせた“功労者”は小沢一郎氏で、自民党以来、業界団体を振り廻すぐらいはお手のものだ。
 しかしこの団体いじりが政党活動の根幹をなしている限り、自民党も民主党も変らない。野田佳彦氏が自民党政治に陥るのは謂わば必然なのだ。従って自民と民主が政権交代する構図は定着しないだろう。
 野田氏も含めた自民党政治と対極にある政党ないしは政治団体が台頭してくるはずだ。自民党政治、官僚内閣制にうんざりした層はこれまではみんなの党を支持してきた。加えて橋下徹大阪市長率いる維新の会が「中央政界に出るべきだ」とする国民は何と60%以上存在する。保守急進改革派が誕生するとみる所以だ。
 小沢一郎氏は反消費増税を掲げて橋下氏と連携したい風情だが、橋下氏はこの話には乗らないだろう。反消費増税では一致するが、維新の会が打ち出す新成長戦略は、小沢氏の団体を頼りに票を獲得する政治手法とは全く相容れない。
 新成長戦略とは何か。ソニーはかつてウォークマンを製造し世界で爆発的に売りまくった。これは商品が“当たった”という現象であって恒常的に売れる、新しい産業が誕生するというのではない。新成長戦略とは既成の団体をぶち壊して、そこをグローバルな競走場にするということである。医師会にも農協にも借りのない人しか着手できない戦略なのだ。

                                                                                                                                           (5月2日付静岡新聞『論壇』より転載)
 
 Ø 掲載論文  
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2012.09.05  総選挙後の政界地図を読み解く  ―橋下・安倍の連携がこの国を建て直す―
2012.08.29  華夷思想に棹差す「東アジア共同体」構想  ―同化できない日本文明と中華文明―
2012.08.22  竹島・尖閣の領有権をめぐる中韓の蛮行―歴史的経緯と国際法に則り従来の穏便外交のツケを解決せよ―
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2012.07.25  大津市中2生徒の自殺をめぐる教育委員会の対応
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2012.06.27  もうこれ以上壊すものはない   ―小沢一郎 妻からの離縁状―
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2012.06.06  依然変わらぬ官益優先増税政策   ―東日本大震災復興も人質―
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2012.05.16  未だ国民不在、党内融和に専心する民主党   ―党運営破綻に棹差す小沢・二閣僚問題の棚上げ―
2012.04.25  小沢一郎氏の大罪   ―角栄風政治は最早通用しない―
2012.04.18  橋下旋風に乗り損ねた「石原新党」  ―根拠薄弱だった亀井氏の新党構想―
2012.04.11  谷垣自民党に責任野党としての責任感なし   ―期待増す第三極―
2012.04.04  地方分権を阻む官僚・中央集権政治からの脱却 ―みんな・維新の会案と自民・公明・民主案―
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2012.03.21  官民格差の是正を急げ ―労使の癒着と馴れ合いを許すな―
2012.03.14  民間団体に巣食う巧妙な天下りシステム
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2012.02.29  橋下「維新の会」大阪を変える ―教育基本条例・職員基本条例、そして教育委員会廃止へ―
2012.02.22  目先のテクニックで国民を愚弄する勿れ ―公務員制度改革・選挙制度改革に真摯に取り組め―
2012.02.15  「不退転の決意」で臨むは消費増税の“前提”である
2012.02.08  今後のエネルギー政策の指針を示せ
2012.02.01  「石原新党」立ち上げの障害  ―ハードル高過ぎる3氏の政策、イデオロギーの壁―
2012.01.25  「宰相の資質を備えよ」  ―官僚支配からの脱却を急げ―
2012.01.18  内閣改造  ―原理主義者岡田氏登用が功を奏するか―
2012.01.11  国民を侮る勿れ   ―真の政治改革なくば国家存続はなし―
2012.01.04  野田首相、忘るゝべからず   不退転の決意で臨むは「公務員制度改革」
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2011.12.21  不毛に終わった日韓首脳会談 ―いま、東アジアは間違った歴史認識に振り回される時期ではない―
2011.12.14  政治の基本理念を貫く橋下「維新の会」―野田財務省内閣に国家構想はあるのか―
2011.12.07  橋下政治に見る真の『政治主導』が国を変える
2011.11.30  橋下「維新の会」圧勝   大阪発―地方行政改革のうねりが起こる
2011.11.23  野田首相に告ぐ 財務省洗脳政治からの脱却を図れ!!
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2011.11.09  TPP参加は本当に日本農業の衰退を招くのか―単純な反対論で国益を失ってはならぬ―
2011.11.02  野田流政治手法を読む ― 時至らば動く ―
2011.10.26  TPP参加で我が国の農地法・農協法の見直しをせよ
2011.10.19  衆院の選挙制度改革―各党の思惑―
2011.10.12 「財務省内閣と云われる所以」
2011.10.05 「官僚支配の政治から脱却せよ」
2011.09.28 「野田首相の政権運営の手法とは」
2011.09.21 「野田政権の手腕とは」
2011.09.14 「野田内閣は行革より党の一体化を狙う」
2011.09.07  野田新政権 ―政権基盤を整えてスタート―
2011.08.31 「野田新政権の国造りに期待する」
2011.08.25 「民主党代表選挙の行方」
2011.08.17  直ちに「公務員制度改革」に着手すべきだ
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2011.07.29 “市民派”首相の脱原発路線
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2011.06.21 「民主トロイカ体制の終焉」そのU
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