次期総選挙に向けて蠢く政界再編の動き

理事・政治評論家  屋山太郎 
 
 水面下で政界再編の動きが進んでいる。「大阪維新の会」が政党要件を整えるため既成政党からの入党を認める方針を固めたようだ。現在の政党要件は国会議員を最低5人揃えなければ、選挙に当たってとてつもない不利になる。政党なら候補者個人のビラに加え、政党ビラを作成配布できる。衆院小選挙の候補者が比例区に重複立候補できる。政見放送もできる。従って維新の会の“政党化”の時期が注目されたわけだが、10月解散11月総選挙の可能性が強まったこの時期を、結党の頃合いとみたのだろう。遅くとも野田政権は13年度の予算編成を終えた1月には総選挙に持ち込むだろう。
 維新の会が総選挙に参画すれば政界再編成になることは疑いない。民主党のガンは小沢一郎氏と鳩山由紀夫氏だった。その小沢氏は37人を連れて既に党を割っているが、再び当選できるのは一桁だろう。旧態依然の金権政治はこれで実質的に終わるだろう。鳩山由紀夫氏は前々回の総選挙ですれすれで当選した実績がある。自民党が強烈な対抗馬を用意しているから当選も怪しい。
 民主党から9人が抜けて別会派を作った。最近では女性議員4人が「緑の風」と名乗って民主党を離れた。他にも中津川衆院議員(比例東京)が離党したが小沢新党には加わらないという。
 野田首相は「民主党を建て直す」と言明している。野田氏の思想傾向は“保守”である。その証拠に安保条約の拡大解釈をぶち上げたり、TPP参加をぶち上げては党内の反応を探った。小沢氏が「一選挙で120人の子分を作れた」(民主党幹部)のは、党執行部を握って選挙資金を自由に使えたからだ。野田首相はこれに倣って次回総選挙では野田、前原誠司氏、岡田克也氏らが公認権を仕切ることになるだろう。
 勝敗には選挙の時期がものを言う。
 野田内閣の支持率は党分裂の影響から20%台まで下ってきた。また7月30日の毎日新聞の政党支持率は民主党9%、自民党17%である。これほど民主も自民も支持率が低下したことはないのではないか。
 このままでは従来なら「選挙にならない」低率である。このため野田内閣は不評の三位一体の税・年金法の成立を急いだのち、補正予算を組んで勢力挽回を図りたい思惑だ。できれば来年度予算を作ったのちの年明けに解散したいだろう。
 谷垣禎一自民党総裁は相手に態勢立て直しの隙を与えず早期解散を求めている。谷垣氏は三位一体法を潰してもよいほど焦っている。その理由は9月の総選挙を迎えれば再選が困難になると見るからだ。しかし自民党は次に政権が転がり込んでくるのだから消費増税だけは成立させたい。しかも17%ほど度の自民党支持率ではとても大勝できない。三位一体案を成立させたうえで、じっくり自民党再建策を考えた方が得策だ。三位一体案の成立と再建策を両立させせるため、森喜朗氏は「谷垣続投」を推めている。

                                                                                                                                           (8月1日付静岡新聞『論壇』より転載)
 
 Ø 掲載論文  
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2012.01.11  国民を侮る勿れ   ―真の政治改革なくば国家存続はなし―
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2011.11.09  TPP参加は本当に日本農業の衰退を招くのか―単純な反対論で国益を失ってはならぬ―
2011.11.02  野田流政治手法を読む ― 時至らば動く ―
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2011.07.29 “市民派”首相の脱原発路線
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