今回は山田宏氏(自民党・参議院議員)をお招きし、発足から約3ヵ月を経た菅政権の下で、日本にとって克服すべき課題についてお話いただいた。
まず専守防衛及び日米同盟について、従来の「矛と盾」という役割分担は昨今の安全保障環境にそぐわないことから、抑止力の大前提である「矛」の重要性を説いた。即ち、敵基地攻撃能力の整備と集団的自衛権の拡大という提言である。米国に「矛」の役目を任せ続けるのではなく、日本も同盟国としての責務を全うし、対等な関係を構築した上で日米安全保障体制を追求するべきだと述べた。
また、尖閣諸島が日米安保条約第5条の適用条件である「日本国の施政下にある領域」に該当するとしても、有事における米国の対応が遅滞する可能性を日本は想定しておかなければならない。無人島の島々を本当に米国が防衛するのかという現実問題を直視し、例えば調査目的での上陸や、建造物の造営等、何らかの事前措置を講じるべきと主張。
ここで氏は、以下3つの対中対策案を挙げた。
①中国とのデカップリング(切り離し)。― 新型コロナウイルスによる経済安全保障の観点から、中国に生産拠点を置く企業の日本回帰又は中国以外の国へ移転するための政府補助金を更に増やす。
②尖閣諸島周辺の警備に当たる海上保安庁の増強。― 米国やイスラエルに倣い先進的な警備力を備える必要性がある。
③外務省の領土主権に対する外交努力。― 米国に対し日本の尖閣諸島領有権を認めさせる外交努力を推し進める。
台湾防衛については、現役武官同士の日台交流を実現させ、多国間で実施される様々な取り組みに日台双方が参加し、互いに安全保障環境を模索するなど、運命共同体としての具体的取組を進めるべきと強調。
憲法改正については、安倍政権時は反対勢力により実現できなかったが、菅政権下では改正に向け進めやすい雰囲気があると言う。9条に明記すべきは「自衛隊」ではなく、国際社会でも認知されている軍隊としての存在を明確にするべく、「自衛軍」とするのが相応しいとした。
経済安全保障については、特に情報技術分野は軍事転用の脅威となる可能性が高いため、日本も対中警戒意識を強め、冷戦期に設立されたCOCOM(対共産圏輸出統制委員会)を日本が主導し、懸念事項については明確に「No」を突き付けられる体制を整えることを提案した。
この他、歴史的にも関係が深い中国周辺の親日国を対象とした外交を進め、東シナ海への中国の意識を逸らせ、米国が不得手とする分野で日本の外交力を発揮していくべきだと締め括った。
質疑応答では、台湾有事と直結している東シナ海問題について、依然として「中国への配慮」が続き、国会での議論が不十分であること、メディアによる国民への周知が不足していること等が指摘された。
中国の脅威に対する危機感を共有し、「自分の国は自分で守る」という気概と国民的議論を高め、日本国の将来を真剣に考える姿勢が今、我々日本人に求められている。今後も一貫した山田氏の政治家としての取組に期待したい。