正しい外交路線再考のとき
―対等外交と脱亜入欧―
理事・政治評論家  屋山太郎 
 
2013.07.31  自浄力なき「民主」・独断専行の「みんな」   ―民主・維新・みんなの有志第2極結成か―
2013.07.24  参院選自民大勝   ―政官寄り添う安定内閣更に進む―
2013.07.17  官僚機構改革は安倍政権の今をおいてない
2013.07.10  決められない我が国の「原子力政策」―電力会社の経営体質・関係省庁との馴れ合い・教条的研究委員―
2013.07.03  参院選で「ねじれ解消」か   ―政権交代可能な第2極となり得る党とは―
2013.06.26  参院選を占う東京都議選結果   ―求められる政治家主導の政治―
2013.06.19  安倍政権で完遂せよ   ―口先だけに終った民主党公約「官僚天下り人事」根絶―
2013.06.12  米中重視、日本軽視外交の韓国   ―「反日」だけで支持率上げる不安定な国家運営―
2013.06.05  7 世紀から続く我が国と中華圏との対立   ―「反日」で国内の合理化を図る中韓―
2013.05.29  「反日」を唱え続けなければ維持できない韓国のお国事情   ―永遠に続く日本への「謝罪要求」―
2013.05.22  橋下氏の「慰安婦」発言に噛みつく韓国   ―「従軍」「強制連行」のウソを糾す―
2013.05.15  止まらない中韓の誤った歴史認識の喧伝   ―安倍外交“脱中華”への転換―
2013.05.08  「中国」に対する二つの見方   ―独りよがりな世界覇権未来予想図/「水問題」と「汚職」で国家沈没―
2013.05.02  安倍発言に対する米紙の批判記事    ―偏向した歴史認識に捉われない真相報道の究明を―
2013.04.24  2次安倍内閣の戦略的国家運営    ―従前の中韓との友好関係の見直しが国家安定へと導く―
2013.04.17  中国の「核心的利益」に抵抗するASEAN諸国    ―東・南シナ海における日米同盟の重要性―
2013.04.10  アベノミクスの“金融改革”始まる    ―他力本願的金融政策の見直し、日銀法改正へ―
2013.04.03  TPPきっかけに農業の構造改革を断行せよ    ―コメの品種改良・借地方式・減反政策の見直し―
2013.03.27  TPP交渉には全権大使任命が望まれる    −本省に忠言・忠告できる人材必要−
2013.03.20  日米同盟の強化    ―TPP参加でアジア太平洋地域での新たなルール作り始まる―
2013.03.13  民主党の空手形「天下り根絶」と「地域主権」    ―自民党安倍政権による壮大な国家改造とは―
2013.03.06  衆院選挙制度改革の行方
2013.02.27  安倍首相TPP参加表明    ―農業・医療分野の既得権撤廃が日本を救う―
2013.02.20  TPP交渉に猛反対の農協    ―独禁法違反の農協にメスを入れ、農家を救え―
2013.02.13  国会同意人事に見る与野党の攻防    ―官僚の天下り人事を排除せよ―
2013.02.06  進まない民主党再建    ―依然イデオロギーの違いが党内結束を阻む―
2013.01.30  安倍首相2月訪米    ―国内事情を踏まえたTPP参加表明が妥当―
2013.01.23  民主党の立て直しどうする    ―最早、親中路線での党運営では立ち行かない―
2013.01.16  民主党惨敗の理由    ―党綱領ができない党内事情―
2013.01.09  アベノミクスへの期待    ―規制緩和・TPP参加など日本経済の体質改善政策が必要―
2012.12.26  安倍流「政治主導」で失われた20年を取り戻せ  ―寄せ集め団体の民主党に最早国民の信頼はない―
2012.12.19  安倍新政権の政治主導  ―デフレ脱却と成長戦略の実行―
2012.12.12  選挙の争点を間違えるな
2012.12.05  衆院総選挙  ―乱立する政党、日本の将来を担う政党はあるのか―
2012.11.28  衆院総選挙間近  ―原発の増設、廃止の性急な結論急ぐべきではない―
2012.11.21  公務員制度改革、TPP…  ―真の国家戦略遂行を実現する政党とは―
2012.11.07  石原・橋下の第三極  ―日本の統治機構はぶっ壊せるか―
2012.10.31  力量なき民主党政権の終焉  ー年明け総選挙後の政界地図を読むー
2012.10.24  丹羽駐中国大使の浅慮を憂う
2012.10.17  政・官・業の癒着構造が「成長戦略」を阻む
2012.10.10  「日本維新の会」に陰り  ―維新・みんなの合併が最善の道―
2012.10.03  中央集権体制を打破しなければ健全な国家にはならない
2012.09.26  民主・自民が果たせなかった官僚制度改革  ―「日本維新の会」への国民の期待 ―
2012.09.19  2030年代に原発ゼロにする」  ―民主党の『論理破綻』は続く―
2012.09.12  民主党政権の3年  ―何もできなかった官僚統制体質の清算―
2012.09.05  総選挙後の政界地図を読み解く  ―橋下・安倍の連携がこの国を建て直す―
2012.08.29  華夷思想に棹差す「東アジア共同体」構想  ―同化できない日本文明と中華文明―
2012.08.22  竹島・尖閣の領有権をめぐる中韓の蛮行―歴史的経緯と国際法に則り従来の穏便外交のツケを解決せよ―
2012.08.15  「官僚内閣制」からの脱却  ―政界再編のうねりは始まっている―
2012.08.08  将来を見据えたエネルギー政策のビジョンを急げ
2012.08.01  次期総選挙に向けて蠢く政界再編の動き
2012.07.25  大津市中2生徒の自殺をめぐる教育委員会の対応
2012.07.18  維新八策に足並みそろえる5党の「大阪都」構想   ―官僚統治機構改革実現を推進―
2012.07.11  政策なき政党に国家を担う資格があるのか
2012.07.04  常識ある党として   ―小沢氏離党後の民主党―
2012.06.27  もうこれ以上壊すものはない   ―小沢一郎 妻からの離縁状―
2012.06.20  最早、党内宥和を言う時ではない   ―消費増税と小沢氏の去就―
2012.06.13  大飯原発再稼働   ―危機を乗り越えた野田首相、橋下市長の英断―
2012.06.06  依然変わらぬ官益優先増税政策   ―東日本大震災復興も人質―
2012.05.30  橋下改革に期待を寄せる大阪市民   ―果敢に取り組む馴れ合い・癒着根絶政治―
2012.05.23  消費税増税・解散総選挙   ―既に終わっている小沢氏の政治生命―
2012.05.16  未だ国民不在、党内融和に専心する民主党   ―党運営破綻に棹差す小沢・二閣僚問題の棚上げ―
2012.05.02  今、国民が期待する政党・政治団体とは  ―現実から乖離し続ける自民・民主の政権交代―
2012.04.25  小沢一郎氏の大罪   ―角栄風政治は最早通用しない―
2012.04.18  橋下旋風に乗り損ねた「石原新党」  ―根拠薄弱だった亀井氏の新党構想―
2012.04.11  谷垣自民党に責任野党としての責任感なし   ―期待増す第三極―
2012.04.04  地方分権を阻む官僚・中央集権政治からの脱却 ―みんな・維新の会案と自民・公明・民主案―
2012.03.28  スピード感増す政界再編   ―守旧的官僚体制派と急進的改革派―
2012.03.21  官民格差の是正を急げ ―労使の癒着と馴れ合いを許すな―
2012.03.14  民間団体に巣食う巧妙な天下りシステム
2012.03.07  維新旋風防風策の“話し合い解散”―大連立で生き残りを賭ける野田民主・谷垣自民―
2012.02.29  橋下「維新の会」大阪を変える ―教育基本条例・職員基本条例、そして教育委員会廃止へ―
2012.02.22  目先のテクニックで国民を愚弄する勿れ ―公務員制度改革・選挙制度改革に真摯に取り組め―
2012.02.15  「不退転の決意」で臨むは消費増税の“前提”である
2012.02.08  今後のエネルギー政策の指針を示せ
2012.02.01  「石原新党」立ち上げの障害  ―ハードル高過ぎる3氏の政策、イデオロギーの壁―
2012.01.25  「宰相の資質を備えよ」  ―官僚支配からの脱却を急げ―
2012.01.18  内閣改造  ―原理主義者岡田氏登用が功を奏するか―
2012.01.11  国民を侮る勿れ   ―真の政治改革なくば国家存続はなし―
2012.01.04  野田首相、忘るゝべからず   不退転の決意で臨むは「公務員制度改革」
2011.12.28  国民の知らない「公務員の常識」―「大阪維新の会」がその常識をぶっ壊す―
2011.12.21  不毛に終わった日韓首脳会談 ―いま、東アジアは間違った歴史認識に振り回される時期ではない―
2011.12.14  政治の基本理念を貫く橋下「維新の会」―野田財務省内閣に国家構想はあるのか―
2011.12.07  橋下政治に見る真の『政治主導』が国を変える
2011.11.30  橋下「維新の会」圧勝   大阪発―地方行政改革のうねりが起こる
2011.11.23  野田首相に告ぐ 財務省洗脳政治からの脱却を図れ!!
2011.11.16  TPP参加がもたらす新しい世界の潮流 ―アジア太平洋地域全体の経済連携が日本の経済成長となる―
2011.11.09  TPP参加は本当に日本農業の衰退を招くのか―単純な反対論で国益を失ってはならぬ―
2011.11.02  野田流政治手法を読む ― 時至らば動く ―
2011.10.26  TPP参加で我が国の農地法・農協法の見直しをせよ
2011.10.19  衆院の選挙制度改革―各党の思惑―
2011.10.12 「財務省内閣と云われる所以」
2011.10.05 「官僚支配の政治から脱却せよ」
2011.09.28 「野田首相の政権運営の手法とは」
2011.09.21 「野田政権の手腕とは」
2011.09.14 「野田内閣は行革より党の一体化を狙う」
2011.09.07  野田新政権 ―政権基盤を整えてスタート―
2011.08.31 「野田新政権の国造りに期待する」
2011.08.25 「民主党代表選挙の行方」
2011.08.17  直ちに「公務員制度改革」に着手すべきだ
2011.08.10  菅首相の「日本窮乏化政策」
2011.08.04  菅首相の「国家衰亡を加速する『脱原発』と対北関連献金疑惑」
2011.07.29 “市民派”首相の脱原発路線
2011.06.22  公務員制度改革の実行なくして消費税10%はない」
2011.06.21 「民主トロイカ体制の終焉」そのU
2011.06.08  民主党「トロイカ体制の終焉」

 日本はギリシャやスペインとは違う。この失われた20年でも日本人の勤勉性は衰えていない。であるのに日本人の生活はどうして落ち込む一方なのか。リーマン・ショック後にアメリカはドル札を刷り続けてドル安をテコに自動車産業や半導体産業をV字型に回復させてきた。そのドル安が進めば進むほど日本の製造業は困窮し、中国や韓国に出て行った。そこでの儲けで辛うじて国内産業を維持してきたが、中・韓との関係がこじれて日本の製造業は息の根を止められそうになっている。
 中国の新体制も尖閣をめぐっては対日強硬路線をとり続けるだろう。頃を見計らって日中親善路線に切り換わるはずがない。体制内は腐敗、汚職が進んで、貧富の格差は開くばかりである。共産党大会でも公然と支配層に対する不満が表明された。中国の不況対策は国が何十兆円ものカネを政府企業に流すから、必然的に支配階級が潤うようになっている。富裕層は海外に子女を住まわせて送金し、輸出代金を誤魔化す。数年前の不動産バブル期には年間4000億ドル(32兆円)もの地下資金が動き、そのうち2500億ドル(20兆円)ものカネが海外に流出したと国際金融アナリストが分析している。これは中国のGDPの3%に当る。日本に引き当てれば15兆円に相当する。この腐敗構造は改まることがないから、人民の不満は膨満している。政府はその度に反日紛争を起こして国内を収めようとするだろう。実は韓国も同じ体質だ。韓国産業を押えているのは4つの大企業グループで、庶民の不満が絶えないから、大統領が竹島に上陸したりするのである。
 こう見ると日本の再生の道は2つしかない。
 1つは円安を作り出すことだ。各国の為替バランスが一定の時、ある国がお札を5割増刷すれば通貨は5割安くなる。岩田一政・元日銀副総裁(現日本経済研究センター理事長)は「50兆円基金設け円売れ」(朝日新聞11月8日)と主張している。為替操作だといわれないために「外貨を買うのは国際金融の安定のためだ」と説明する。「欧州金融安定化基金が発行する債券を買えばユーロの安定にもつながるし、円安になって日本経済も助かる。一石二鳥だ」という。実は安倍自民党総裁は内輪の会議でしばしば「円増刷論」を語っており、岩田構想とも符丁が合う。因みに日銀の白川総裁の任期は来年3月末までだ。
 2つは東日本大震災で判明したことだが、半導体やマイコンの最高級の部品製造部門はまだ日本に残されている。レクサスエレクトニクスがその代表的企業だ。エルピーダメモリは倒産して外資に買われたが、レクサスはそこから部品を調達しているトヨタ、パナソニックなど日本企業が再建資金を出資して政府系の産業革新機構傘下で再建を進める方向になった。製造業を円安によって再生させれば、中韓と距離を置いて付き合える。この方針は7世紀の聖徳太子も19世紀の福沢諭吉も言っている。対等外交で且つ脱亜入欧が正しい外交路線なのだ。
                                                                                                                                           (11月14日付静岡新聞『論壇』より転載)
 
 Ø 掲載年別  
2014年の『論壇』

2013年の『論壇』

2012年の『論壇』

2011年の『論壇』
 

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